屋久島スギ林の原生自然環境保全地域にもシカ食害の影響があることが分かりました。
NACS-Jは1983年より屋久島のスギ林に設置された原生自然環境保全地域のモニタリング調査を10年ごとに実施してきました。
今年が30年目の調査の年にあたりますが、昨年9月に東京農業大学と協働で、屋久島の西部、標高1300mに位置するスギ林の事前調査を行いました(環境省委託)。この結果、1991年に大きなハリギリが倒れたギャップ(隙間)が今も拡大傾向にあることが分かりました。
また、スギは順調に更新(世代交代)が進んでいましたが、モミやツガなどの針葉樹や常緑広葉樹のうちハイノキやサクラツツジは減少傾向にあることが分かりました。
一方で、シカが嫌うアセビやシキミなどは増加傾向にありました。ここでもシカによる食害の影響が懸念される結果となりました。
今年はほかの標高域も含めて30年目のモニタリング調査を行う予定です。
▲スギ林の巨大なスギの計測
ところで、屋久島は今年、世界遺産登録20周年を迎え、12月には屋久島町主催の記念式典が開催予定です。また、宮崎県綾町で2011年5月に開催した国際照葉樹林サミットを10月に屋久島で開催する予定です。
屋久島は1980年にユネスコエコパークにも登録されていますが、地元住民をはじめ一般にあまり知られていません。また、登録当時は地域区分として、奥山に核心地域と緩衝地域が設定されただけだったので、地元の市民団体や町は、国際照葉樹林サミットを今後、居住地も含めた移行地域の設定を検討する機会にしたいと考えています。
NACS-Jが2006年から3年間行った屋久島の自然環境総合調査でも、奥山全体で広がるシカの食害問題は、結局は里での人の暮らしや土地利用に課題があることが明らかとなっています。町や住民の方々が屋久島の自然を守り、利用していくための主体的な取り組みをNACS-Jでも引き続き支援していきたいと考えています。
(保全研究部・朱宮丈晴)