普天間飛行場移設事業「公有水面埋立承認願書」への緊急声明を発表。
普天間飛行場移設事業「公有水面埋立承認願書」への緊急声明(PDF/138KB)
普天間飛行場移設事業「公有水面埋立承認願書」への緊急声明
2013年3月22日
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
本日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸部への移設に向けた公有水面埋立承認願書が提出された。
「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価」の評価書は、沖縄県知事から「評価書で示された環境保全措置等では、事業実施区域周辺域の生活環境及び自然環境の保全を図ることは、不可能」との厳しい意見が出されている。その後、補正された評価書も、日本自然保護協会が精査したところ、このままでは環境保全は不可能であると、先月、厳しい指摘をした。
環境影響評価で多くの問題を残したまま、公有水面埋立申請を提出することは、国の姿勢として許されることではない。
日本政府は、2010年名古屋で開催した生物多様性条約締約国会議(CBD/COP10)で、生物多様性条約戦略計画2011-2020(通称、愛知ターゲット)を採択し、目標10「2015年までに、気候変動又は海洋酸性化により影響を受けるサンゴ礁その他の脆弱な生態系について、その生態系を悪化させる複合的な人為的圧力を最小化し、その健全性と機能を維持する」を約束した。また沖縄島北部の辺野古海域に隣接する「奄美・琉球」を、世界遺産登録の暫定リストに本年1月に加えたばかりである。
その一方で、生物多様性の豊かな辺野古の海域を埋め立てる手続きを進めることは、国として矛盾した姿勢である。
辺野古・大浦湾海域は、干潟・藻場・泥場・マングローブ・サンゴ礁と多様な生態系を有し、生物多様性が極めて高い豊かな海域であり、大浦湾チリビシのアオサンゴ群集に象徴されるように、劣化の進んでいる我が国のサンゴ礁において、唯一無二の価値をもつ。手つかずのまま保全することが、沖縄ひいては日本のサンゴ礁を保全する上で不可欠である。国の絶滅危惧種である「沖縄のジュゴン個体群」にとっても重要な生息地であり、この海域の海草藻場を積極的に保全しなければ近い将来絶滅を免れない状況にある。
辺野古への移設は一時的な暫定措置との説明も聞くが、サンゴ礁は一度埋め立てられると、二度ともとの豊かな自然環境は戻らない。埋め立てはサンゴ礁の自然にとって不可逆的な行為である。
沖縄県知事が、沖縄県の宝であるサンゴ礁海域を失わないよう、良識に基づく判断を下すことを望む。
以上