東日本大震災から2年― 復興に向けて
いつの時代にも、人は自然の力に抗して生活や生産の場を確保しようと考え、そのための技術を持とうとする。巨大な技術を持てるようになると、その傾向はますます大きなものとなる。
しかし、その結果が災禍をもたらすと、それに対する反省から、自然の力に従う方法を求めるようになる。それが自然立地的な土地利用の思想であり、大きな時代の流れのなかで、自然保護はそのような考え方として捉えることができる。
技術の力は有限であるから、あらがえる自然にはある「限度」をもたせようとする。それが洪水の確率や想定する津波の高さであったりする。限度を設けるのは人であるが、自然はその限度の内側に収まるわけではない。そこで、想定外の出来事が発生する。
震災後、当会が行ってきた東日本海岸調査では、自然のもとの地形が現れたり、動植物がたくましく生き延びていることが明らかにされている。自然保護は、自然を大切にして、自然の力に従おうとする思想であり、自然の力にあらがおうとする現政権の「国土強靭化」の思考とは相容れないものである。
未来の世代に向けた長い将来を見据えたときに、人がつくる人工物はいつか寿命が尽きるものであるから、悠久な自然の力に従って、それを賢く利用することが、いま、求められている大きな課題であるといえるであろう。
日本自然保護協会 理事長 亀山 章
※NACS-Jでは、巨大防潮堤に依存することなく、健全な自然生態系の保全と防災が両立できる復興事業を求め、海岸堤防・防潮堤復旧事業と海岸防災林復旧事業に関する意見書を出しています。また、被災地で巨大防潮堤建設計画の変更を求めている地元の方々と記者会見を行いました。詳しくはこちら。