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「種の保存法」改正に関して要望書を出しました

2013.02.28
要望・声明

種の保存法に関する要望書(PDF/174KB)


2013年2月27日

自由民主党環境部会長 北川知克 殿

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

種の保存法改正に関する要望書

絶滅のおそれのある野生生物を保全するために、国は「種の保存法」を1992年に制定しました。しかし、絶滅危惧種は2007年から2012年の5年間で422種増加し3597種となるなど増え続け、同法の国内希少野生動植物種(以下、国内希少種)は現在までに90種が指定されていますが、絶滅危惧種の2.5%に過ぎない等の課題があり、同法が種の保全に有効に機能しているとは言えません。今国会でこの法律の改正案が制定後22年目に初めて提出されるようですが、罰則の強化や登録制度などの部分的な改正にとどまっています。そこで当協会は種の保存法を抜本的に改正すべく以下の提言を述べます。

 

提言① 常設の科学委員会を設置する

理由1:
国内希少種選定の基準が不明確であること、意志決定の過程の透明性が確保されていないため、絶滅の危険性より、環境省が指定しやすい、したい種を指定しているのが現状です(例:2004-2011年の8年間に登録された21種のうち19種が世界遺産登録を控えた小笠原産の動植物の登録でした。絶滅の危険性に応じて、国内でバランスよく指定を進める必要があります)。
理由2:
国内希少種を保全するための保護増殖計画は国内希少種90種の内47種しか策定されておらず、計画が有効に機能しているかどうかを定期的に科学的に評価するシステムも存在していません。
これらを解決すべく「希少野生動植物の専門家から構成される常設の科学委員会を設置し、委員会は種の指定および保護増殖計画についての報告・勧告を環境大臣に行う」、「5年に1度国内希少種および保護増殖計画について全面的な見直しを行う」の条文を追加すべきです。

提言② 国内希少種の指定を拡大するため、種指定提案制度を設置する

環境省の「生物多様性国家戦略2012-2020」では、2020年までに国内希少種を25種増加させ総計115種とすることを目標としていますが、絶滅危惧種3597種のうち3.2%に過ぎません。日本が議長国として生物多様性条約第10回締結国会議において議決した2つの世界目標「愛知目標」※1、「世界植物保全戦略」※2を達成するためにも国内希少種の指定を大幅に拡大する必要があります。

指定が進まない理由の1つが、指定に必要な情報収集の費用が不足していることが挙げられます。京都府・奈良県・徳島県・島根県においてこれらの情報提供も含めた市民からの種指定提案制度を設けておりますが※3、種の保存法にも同様の制度を設け、種指定に対する市民参加の機会をつくると共に、指定の拡大を図るべきです。

※1 「愛知目標」目標12 2020年までに既知の絶滅危惧種の絶滅を防止する。とくに減少している種の保全状況を改善する。
※2 「世界植物保全戦略」目標8,9 2020年までに絶滅危惧種の75%が域内/域外保全される。
※3 (県民等による特定希少野生動植物の指定の提案)第10条 県民等は、規則で定めるところにより、理由を付して、知事に対し、指定をすることを提案することができる(奈良県希少野生動植物の保護に関する条例平成二十一年三月二十七日制定)。

提言③ 「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略」を全省庁横断の法定計画とする

環境省は、種の保存法の適切な運用を進めるため「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略」を平成25年度中に策定するようです。しかし、任意計画であることと、環境省の取り組みのみを主な対象としているため、機能しない可能性が高く、戦略を法律の中に位置づけ、全省庁横断で策定する必要があります。

そこで、この保全戦略を法律に位置づける際には、「保全戦略は、環境省を含めた全関連省庁の取り組みを含む」、「保全戦略に書く内容は、目標を明確化し、いつまでに誰が何をするのか明文化することを基本とする」の条文を追加すべきです(例:野生生物課は2015年までに絶滅危惧種のうち20種新たに国内希少種に指定する等)。

提言④ 種の保存法の運用も含めた抜本的な見直しを2年以内に行う

22020年までの2つの世界目標「愛知目標」「世界植物保全戦略」を達成するために、早急に種の保存法の抜本的な見直しと、その運用方法の改善が必要です。2015年の愛知目標達成の中間報告にあわせて、同法の見直しを2年以内に行うことを法律に明記すべきです。

改正すべき課題として、国内希少種が少なく、特に海洋生物の指定が少ないこと、生育地等保護区指定が9地区885haのみで非常に少ないこと、公共事業を種の保存法の適用除外とする条項(第54条)の存在、様々な主体や事業によって得られた絶滅危惧種のデータの集約や管理する仕組みが不足していること、農林業への直接支払い制度のような絶滅危惧種保全を推進させる制度の構築などがあり、早急な見直しが必要です。

以上

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