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仙台で開催された「震災復興ワークショップin仙台」に参加してきました。

2013.01.17
活動報告
icon_shimura.jpg保護プロジェクト部の志村です。
2013年1月16日(水)に、仙台で開催された「震災復興ワークショップin仙台」に参加してきました。
副題は「自然の恵みを活かす復興に向けて、震災後の環境対策のあり方を考える」。
主催は応用生態工学会と日本生態学会。共催は日本景観生態学会、植生学会、日本水産学会でした。
まず、竹門康弘氏(京都大学水資源環境研究センター准教授)から
「昨年11月に国交省から『河川・海岸構造物の復旧における景観配慮の手引き』が出て海辺のエコトーンの重要さなどが指摘されたが、現場がどうなっているか後半でお聞きしたい。前半は、そもそも配慮しなければいけない自然のめぐみとはなにか、自然のつながり、そして自然のめぐみを利用する立場から話題提供していただく。環境配慮にとって障害となっている社会のしくみについてもお聞きしたい」という趣旨説明がありました。
自然のめぐみについては3名の方から話題提供がありました。
占部城太郎氏(東北大学大学院教授)は「干潟生物群集に及ぼした津波の影響:インパクトとこれから」と題し、生態系は安定かという生態学のテーマが、今回の津波でどうだったのかを紹介されました。
仙台周辺の6つの干潟について、震災前と震災後の生物種センサス調査の結果、干潟ごとにみると、震災前後でほとんど変化がなかった干潟、いったん種数が大きく減ったものの元の数値に近づきつつある干潟、以前とは違った種構成になって変化を続けている干潟など、それぞれの違いが見られたとのこと。小さいけれど、それぞれ個性的な干潟があることで、仙台湾全体では種数は大きく減少せず、地域全体の豊かさを維持している、とのことでした。
松政正俊氏(岩手医科大学教授)は「汽水域の恵み:ベントス(底生生物)群集の特性とこれから」。汽水域とひとくちに言っても、河口から上流にかけて、そこにくらす生物群集と塩分濃度・深度などの違いからそれぞれに特徴のあるサブシステムがあることを紹介。また、カキは海の生き物と思われているが、幼生の着生や産卵には汽水域が関係しているなど汽水域という環境が多くの自然の恵みをもたらしていることを具体的に説明されました。
平吹義彦氏(東北学院大学教授)は「砂浜海岸エコトーン植生の撹乱・再生体制が暗示する賢い復興の方向性」として、砂浜海岸を構成しているパーツについてや、震災後、予想以上に早い遷移が進み回復しつつある植生の様子、ハリエンジュなど外来生物が今後の脅威となる可能性があること。堤防工事を含むさまざまな事業で浜辺が戻ると思っている人が多いかもしれないが、すでにあっという間に進んでしまった工事もあり、元の浜に戻るための資源は残っているのだろうかと危惧されていた。また、海岸のエコトーンだけに減災・防災機能を集中させているが、海岸林を含めた視点が重要だろうと提案されていました。
なお、平吹さんは今年のNACS-J沼田眞賞受賞者のお一人。2月4日の記念講演会で、くわしくお話をお聞きできるのが楽しみです。
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(写真は、話題提供をする平吹さん)
鎌田麿人氏(徳島大学大学院教授)は、「生態系の再生を支える”つながり”」として、生態系サービスを活かした復興が必要なこと、自然の回復する余地を残した復興事業をすべきなどを提案。また、今後起こるであろう東海地震に今回の経験をいかす必要がある、あれほどの大規模な震災でありながら今までと同じ5年という期限で復興事業が進んでいることの疑問、復興増税による事業で徳島の干潟がすでに失われてしまったことの紹介もありました。
話題提供の最後は、NACS-J沿岸保全管理検討会委員でもある清野聡子氏(九州大学大学院准教授)。「漁村・海村の立地を再考する-高台・潟・緩衝帯・引堤」として、海岸は、震災以前からの課題である、海岸浸食、制度の縦割りや横割り、バッファゾーンのない土地利用が解決されていないまま、震災復興で新たな課題を抱えていると説明。
今まで堤防は海岸線近くに設置するものとされていたが、昨年発表の「景観配慮の手引き」で「引堤」が取り入れられたのは画期的と指摘されました。堤防を作る位置で、守れるものや破壊するものがどう変わるかイメージできるよう図にしたので、こういう選択肢があることを知ってほしい。
土木は断面図の世界なので、生物のハビタットも断面図で説明すると土木関係者にも理解されやすいことなども紹介されました。また、堤防ができなくてはまちづくり計画もできないと言われるが、「防災」「環境」「地域振興・利用」は同時に考えるべきと指摘されていました。
後半の座談会は、会場中央のコの字型テーブルに話題提供者とコメンテーターが着席。そのまわりを来場者が囲むように配置換えをして議論が進みました。後半のテーマは、「自然の恵みを活かす環境対策のあり方」に必要な論点を整理し、生態工学会会誌に掲載しようというものでした。
コメンテーターのお一人は、「景観配慮の手引き」を策定した委員長の島谷幸宏氏(九州大学大学院教授)で、「手引き」の策定の経緯や配慮事項などを紹介。ほかの話題提供者も指摘していたとおり「手引き」には自然のめぐみを活かす、自然保護に重要な基本的なポイントがたくさん挙げられています。ただし、1ヶ月で作りあげるタイトなスケジュールのため、応用生態工学会の研究者以外は呼び掛けに応えられなかった、いろいろな学会でも日頃の準備や、あらかじめ連携体制をつくっておくこと、若手が現場に調査に行きベテランがバックアップすることで人材育成にもなる体制づくりなども指摘されました。
ほかの方からは、自然のめぐみとして挙げるのは生物だけでなく、砂浜が縮小していたことで被害を大きくした事例などから、砂浜の防災機能、その砂浜を維持するしくみが必要であることも加えようという提案などがありました。
清野さんは、法律上、海は「不動産」として扱われている。砂は移動するのが自然のしくみにもかかわらず、税金をかけた砂が海に戻ることは税金を捨てることと思われる。海は動的な環境であることを前提にしたいと指摘されました。会場からの防潮堤計画がすすむ窮状に対して、今の法律や技術でできることはまだある。ただしあちこちで計画が進んでおり、海岸はそれぞれ環境も状況も異なるので、研究者が一人ひと浜ずつ張り付くくらいのことをしていかないとダメだと話されました。
NACS-Jも、2月上旬の週末には東日本の海岸の保全を考える催しを続けて開催します。調査でわかった海岸植物の現状や、地域の皆さんの声をご紹介するほか、防潮堤のあり方を多くの方と一緒に考え、提案していきたいと思います。ご参加お待ちしています。
詳しい日程・会場はこちら>>>https://www.nacsj.or.jp/katsudo/higashinihon/2012/12/post-12.html

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