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サンゴ礁と人の暮らしをテーマにした研究会に参加してきました。

2013.01.17
活動報告
icon_abe.jpg  保護プロジェクト部の安部です。
国士舘大学世田谷キャンパスで行われた第4回多良間島研究会に参加してきました。

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今回は3名の方から次のような発表がありました。
小林竜太さん(慶応大学大学院)から「リモートセンシングによる石垣島サンゴ礁形成史の地域差推定~八重山諸島先史資源利用に向けて~」、渡久地健さん(琉球大学・右写真)から「漁民の漁場認識~南城市の漁民が作ったサンゴ礁地名図を読む」、深山直子さん(東京経済大学)から「サンゴの伝統的利用~沖縄・石垣島における左官の事例を中心に」。
最初の小林さんの発表から。
サンゴ礁は沖縄などの南の島の周りに発達しますが、このサンゴ礁の発達の仕方には地域差があります。ひとつの島の中でさえ、大きな差が生じることがあります。
一般に海岸には多くの遺跡が残っているので、これまで、サンゴ礁が発達している地域ではサンゴ礁の魚や貝などの資源を利用できるため人が優先的に住むのではないかと思われていました。
しかし、遺跡として残っている昔の人が使った魚の骨や貝殻などの分布を調べてみたところ、必ずしもそうではないことがわかりました。島ごと地域ごとに異なる特性があり、また河川沿いに多く人が住む傾向があったとのことです。

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2番目のスピーカーの渡久地さんは、漁民がつけたサンゴ礁のさまざまな場所を示す地名のお話。
サンゴ礁で漁をする海人たちは海のさまざな場所に地名をつけています。渡久地さんは沖縄の漁師から聞き取りを行い、地名の由来を調べています。
「ミーチャー(3つの意味)」はハマサンゴが3つある場所を指し、「アミイリヤーチブ」は「アミイリ(網を入れる)」と「チブ(壺)」を組合わあせた地名です。
「テラザ」は方言名で「てぃらじゃー」と呼ばれるマガキガイのことを指します。このマガキガイがよく採れる場所の地名が「テラザ」と名付けられています。「チブ(壺)」や「クムイ(凹地)」などの単語と併せ、「テラザチブ」「テラザクムイ」などと応用されています。
(左上の写真は、南城市のサンゴ礁域の地名の一部)
最初に地名があった訳ではなく、海人みんなで会議をして決めた訳でもないのにあちこちに名前がつけられ、共有されています。なぜその地名にしたのか、その由来には漁民の想いが表れているものなのです。
例えば「タフネヤ」は一般にタコがよく採れる場所を意味しますが、「A村のBさんのタフネヤ」というように名前がつく場合には、その人以外の人は採ってはいけないという海人の掟を示しています。このように地名は人によって意味づけされたものであり、必要に応じてつけられてきたものです。沖縄の地元の人たちがサンゴ礁とともに暮らしていた様子が伝わってきます。
NACS-Jが保全を行ってきている沖縄・大浦湾のチリビシのアオサンゴ群集(参考ページ:https://www.nacsj.or.jp/katsudo/henoko/2008/07/post-14.html)の「チリビシ」にも意味があります。「ヒシ」は干瀬(珊瑚礁などからできた平らな岩の浅瀬)、「チリ」は切れていることを表し、「チリビシ」はサンゴ礁の礁嶺が切れている場所のことを指しています。
 
最後のスピーカーの深山さんは琉球漆喰に伴うお話をされました。
漆喰は、沖縄の人々がサンゴを「石」と認識した上で建築材として利用していた頃に盛んに用いられていました。その頃には左官屋さんたちは生きているサンゴを採ってきて、焼いて粉末上の石灰にしたものにワラを混ぜて手作業で練っていました。
現在は、沖縄県漁業調整規則が制定されサンゴの採取が禁止されています。
こうして、サンゴ礁と人々が一緒に暮らしてきた昔のことを調べてみると面白いものですね。

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