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琉球列島の環境問題をまとめた書籍の刊行記念シンポジウムに参加してきました。

2012.12.13
活動報告
icon_abe.jpg こんにちは、保護プロジェクト部の安部です。
今月、高文研から出版された「琉球列島の環境問題 『復帰』40 年、持続可能なシマ社会へ」(沖縄大学地域研究所共同研究班著)という琉球列島の環境問題を多様な切り口でとらえた本が発行されました。

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この『琉球列島の環境問題』刊行記念シンポジウム【「復帰」40年・持続可能なシマ社会へ -琉球列島の環境問題からの提案-】に参加してきました。
(→パネルディスカッションの様子)
プログラムなど、シンポジウムの詳細はこちら
沖縄の諸条件に合わない公共事業のやり方、いわばチェーンソーで豆腐を切るようなちぐはぐ技術や事業の進め方に対して、沖縄大学地域研究所初代所長宇井純氏が批判した「それは持ちますか(=持続可能性)」 の言葉を軸に、奄美から与那国まで20名による現状報告を基に琉球列島の環境問題を検証することに努め、持続可能なシマ社会を展望した本書。
この日は宮古島、石垣島、竹富島、奄美、東京、三重など県内外各地から著者が勢揃いし、自然環境の観点のみならず、文化や平和、経済などさまざまな角度から話題提供および議論が行われました。
最も印象に残った「町並み保存運動40年」と題した竹富公民館前館長の上勢頭芳徳さんのお話を紹介しましょう。
最初に竹富島の方言で挨拶が始まりました(沖縄の言葉は一つではなく、島によって地域によって言葉は変わります)。
-------以下、上勢頭芳徳さん(右写真)のお話-------

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一時期はこの竹富島も日本のほかの地域と同じように人口減少や若い人の島外流出などで悩んでいたこともあったのですが、今では着実に増加しています。1992年には250人だった住民が2012年には351名います。
風土に合わせた地域の文化を大事にすると人口も増えるということを島民が確信し、「外部資本を入れずに島の土地を守って、自律して、自立的な振興を図る」とうたった竹富島憲章を制定し、島民の創意工夫で島に根差した観光を推進することにより、竹富型観光とまで呼ばれるような良い状況になっています。
まず、竹富島になぜリゾート会社を入れたのかということをお話ししたいと思います。実は、ここはリゾートで地域振興を図るために入れたのではないのではないのです。島が大事だからこそ、売られていく土地を買い戻し、そして一定年限後に島に返して欲しいという協定を結んだうえでリゾートととの共存を選びました。ですので島民の雇用などという経済的な条件は一切入れませんでした。
ここでこのリゾートを追い返してもまたこの土地がアメリカファンドやチャイナマネー、オイルダラーなどの手にもわたりかねないので、それならば言葉も通じ、交渉に応じてくれるリゾートときちんと話をする方が良いと考えました。
竹富島では島にとって大事なことは公民館議会で決定し、最終的には公民館総会(住民総会)で決定する、そしてその結果を受けて公民館役員が執行するというシステムを取っています。
私は公民館長として「竹富島の神々に誓って遵守する」という言葉が添えられた起請文みたいな協定書に調印しました。その際には島の本気度を示すために血判を押したのですが、気合が入りすぎたため、血が出すぎて、血染めの血判状になってしまいました。
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このほか、リゾート開発問題や基地問題、共同売店が担う役割、言語や文化、奄美や石垣島の状況など話題が多岐に渡った盛りだくさんなシンポジウムでした。
この日のシンポジウムの様子は下記のサイトからユーストリーム動画で見ることができます。
【Ustream動画】
「復帰40年・持続可能なシマ社会へ―琉球列島の環境問題からの提案―」
本もぜひ手に取ってご覧ください。
 『琉球列島の環境問題 -「復帰」40年・持続可能なシマ社会へ-』
編著:沖縄大学地域研究所「『復帰』40年、琉球列島の環境問題と持続可能性」共同研究班
編集委員:桜井国俊・砂川かおり・仲西美佐子・松島泰勝・三輪大介
発行所:株式会社会社 高文研
販売価格:2800円+税

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