5年目を迎えた「モニ1000」。70万件以上のデータが蓄積され、自然環境の現状が少しずつ明らかになっています。
全国約200カ所の里やまで自然環境の長期調査を行っている「モニタリングサイト1000里地調査(以下、モニ1000)」では、毎年1300名以上の市民調査員が参加し、すでに70万件以上のデータが蓄積されています。国土の4割以上を占める里やまを全国規模で調査することはかつては困難でしたが、市民の力によって広域的な生物多様性観測ネットワークができあがっています。
2008年途中から本格的に始まったモニ1000も5年目を迎えました。これまでの結果からは、都市近郊では外来植物が多く記録される一方で、アカガエル類やホタル類の記録個体数は極めて少なく水辺の環境が悪化している場所が多いといった全国傾向も明らかとなりました。また草丈の高い草地をすみかとするカヤネズミの生息場所がいくつかのサイトで急速に減少していたり、最近3年で身近な鳥たちの記録数が全国的に減少したといった経年的な変動についても徐々に明らかとなっています。
<→図:主要な留鳥の記録個体数の全国的な傾向。それぞれの種についての記録個体数の相対的な変化(2009年の記録値を1とした値)を各サイトについて計算し、それを全サイトで平均して求めた。>
膨大なデータからはさまざまな解析が可能ですが、大切なのは里やまの生物多様性の変化をいち早く捉え、広く伝えることです。そこで今年度から生物多様性の状況を複数の指標(ものさし)を使って定期健康診断書のように簡潔に伝えるための「指標レポート」を発行します。ここで使っている指標は生物多様性条約COP11で愛知ターゲット達成状況の評価指標として推奨されているものも多く含んでおり、日本や世界全体の生物多様性評価にも貢献できると確信しています。
調査成果だけでなく、全国での調査が進み各サイトでの市民によるさまざまな取り組みも進んでいます。そこで、「モニ1000里地調査シンポジウム」を開催することにしました。
指標レポートなどモニ1000の成果を発表するとともに、市民による生物多様性モニタリング調査の意義を改めて一般の方にお伝えしたいと思います。また全国でも特に特徴的な取り組みを行っている現場の調査員の方から活動の工夫や市民調査の魅力をお話いただきます。
調査に参加されている方はもちろんのこと、会員の皆さまもぜひご参加ください!
(高川晋一/保全研究部)
モニ1000里地調査シンポジウム
~市民が見つめる 調べる 支えていく 日本の生物多様性~
日時:1月26日(土)10時~16時30分
場所:東京大学弥生講堂一条ホール(東京都文京区弥生1-1-1)
主催:日本自然保護協会 参加費:無料 申し込み:不要
内容:第1部 みんなで調べて見えてくる生きものたちの姿・多様性
第2部 市民が支える”調査”の現場
シンポジウムの詳細はこちらのページをご覧ください。