日本サンゴ礁学会で、10年間行ってきた辺野古の海草藻場調査(ジャングサウォッチ)の結果の速報を紹介しました。
保護プロジェクト部の安部です。
今回は、11月22~25日に開催された日本サンゴ礁学会第15回大会のご報告をします。
今大会では、コブヒトデの話から、最近宮古島の深い海(水深54-87m)で発見されたサンゴ礁、久米島のナンハナリと呼ばれる大きなサンゴ群集の台風の被害からの回復、日本の海から海外の海まで、海洋生物データベース、大昔の白亜紀ストロマトライトの形態、環礁と津波、サンゴと褐虫藻の共生のメカニズム、石西礁湖北礁での4歳までのミドリイシの生き残りの状況、サンゴ移植技術、ウミウシやイソバナ、などさまざまなテーマの話が出ています。
印象に残ったのは、アオサンゴの研究と大浦湾の珪藻の発表の2件でした。
チリビシ(沖縄)のアオサンゴ群集の遺伝子解析をしてくださった安田仁奈さん(宮崎大)の発表「東南アジア西太平洋におけるアオサンゴの集団遺伝構造」の概要は次の通り。
東南アジアのさまざまな地点のアオサンゴの遺伝子型を調べたところ、基本的に個々の群集が隔離されているということが分かった。つまり、同じ遺伝子型を持つ個体が他の場所にもいる確率は低いので、個々に保全することが大切である。
特にアオサンゴは浮遊幼生期が最短で2~3時間と非常に短く、少数の幼生を年に一度しか放出しない。そのため、一度ダメ―ジを受けた集団は、他海域からの幼生加入による回復が見込めない可能性が高い。
続いて、山城秀之先生(沖縄高専)の発表は、大浦湾のチリビシのアオサンゴ群集に付着する珪藻についての話でした。
オウギケイソウ属(Licmophora)2種とリボン状に連なるオビケイソウ属(Fragilaria)2種だったということが分かり、これらの珪藻は、サンゴ骨格そのものに付着しているのではなく、アオサンゴが分泌する多糖類のシート上に付着していることが分かったと報告がありました。
私たちがフィールドで珪藻が連なったシートが分離するのを目にしてきた事実と一致します。また、組織切片観察の結果、珪藻の付着が生殖に大きな影響を与えているということもなさそうです。
驚くべきことは、同じく組織切片観察により、アオサンゴのポリプ内に卵が確認できたことです。前出の安田先生の研究により、チリビシのアオサンゴから得られた40標本は全てクローンであることと併せると、大浦湾チリビシのアオサンゴはメス群体からなる群集であることが示唆されました。作られた卵がどうなるのかは謎のままですが、安田先生、山城先生お二人のご研究により私たちの長年不思議に思っていたことが明らかになりました。
私からは、「沖縄島東海岸辺野古における海草藻場調査(ジャングサウォッチ)10年間の結果報告」と題し、NACS-Jが2002年より10年間行ってきた辺野古の調査結果の速報を紹介しました。
ジャングサウォッチが始まった経緯からはじめ、NACS-Jと市民の努力により、同海域にはウミヒルモ、リュウキュウスガモ、ベニアマモ、リュウキュウアマモ、ウミジグサ、マツバウミジグサ、ボウバアマモの7種(全て環境省RDBの準絶滅危惧種)の生息が記録されたことや、2002年以降、辺野古海域の海草藻場は海草類が常に安定的に生育していることなどをお伝えしました。