第5回IUCN世界自然保護会議(WCC)―ジュゴン保護キャンペーンセンター主催のノレッジカフェで大浦湾の話をしました。
保護プロジェクト部の安部です。
WCCでジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)主催のノレッジカフェ「ジュゴン保護に対し、何が有効で何が有効でないか(What works and what does not work:examination of dugong
conservation measures and strategies)」にスピーカーの1名として参加し、沖縄県の大浦湾における自主ルール設置の取り組みを発表しました。
(→カフェの様子)
速報はSDCCのウェブサイトIUCN済州島第5回世界自然保護会議 9/11に掲載されているのでご覧ください。
ディスカッションの中で、Haribon財団のMarvic Pajaroさんからフィリピンの事例をお話いただいたのでご紹介しましょう。
「フィリピンには1000以上の数多くの海洋保護区があります。ジュゴンの保護を目的としたものや、ほかの生物の保全を目的としたものなど種類も多くあります。国が管理するものもありますが、今日は自主的にルールをつくり管理している海洋保護区の話をしましょう。
(←前日に別のワークショップで見せていただいたMarvic Pajaroさんのプレゼンより。地域レベルでの参加の重要性を説いています。)
リーダーシップを取る人がいることと、コミュニティオーガナイザーがいることがこのタイプの海洋保護区には必須だと思います。
コミュニティオーガナイザーは必ず必要な人物です。生物学者がこの役割をつとめることもあります。生物学者ならば地元の人に、どこを保護区にしたら良いかを聞くことになります。コミュニティオーガナイザーはコミュニティ(地域の人たち)と一緒に飲んで寝て多くの時間を過ごし、余所からの指図は受けないという姿勢に出がちな地域の人たちの信頼を得るようにします。
またどのコミュニティを支援するのか見極めることも大切な作業です。例えば違法漁業が盛んに行われているような地域よりは、他者の意見を受け入れやすい、信心深いコミュニティを選ぶ方がより成功につながります。
コミュニティオーガナイザーがコアグループを作り、ミーティングをたくさん行います。またフィリピンには海洋保護区(サンクチュアリと呼ぶこともあります)がたくさんあるので、類似の事例と比べることも必要です。
そして地域の条例を作り、パトロール、モニタリング、計画作りを進めるグループなどをつくっていきます。従来は村のレベルで行われてきましたが、今は共同管理(co-management)という体制で行政が関わることもあります。
しかしながら、行政が全てのプロセスに関わっていなかったりすることも多く、そうなると進めるのが難しくなってきます。やはりコミュニティがこのルール作りの主体になるのだと思います。コミュニティのやる気が続かなくてリーダーが1人取り残されたりすることもありますが、コミュニティが本気で考え、管理したいと思うならば、この自主ルールによる海洋保護区作りはうまくいきます。
1970年代にアポで設置された海洋保護区は最初は地域ベースで管理していたのですが、ある時点で国が管理するようになりました。こうなるとダイバーからの収入のほとんどが国に行ってしまいます。いったんこのようなシステムが出来上がると地域にお金がいくようにするのが難しくなります。
さまざまな意味で、困難に負けず、コミュニティ(地域)が管理を続けていくのは難しいです。
外部からの支援も必要です。一時期、シリマン大学も海洋保護区の設置を手伝っていたこともありました。問題は後から助けを求めても助けが得られないことでした。そこでHaribon財団にその役が回ってきました。
例えばモニタリングがうまくいかない場合の支援です。大きな予算を常に確保するのはこちらも大変ですが、少額の予算を確保しておき、必要なときに現地に赴き必要な支援をすることは可能です。このパイプを確保しておくことが非常に重要です。
地域との関わりは本来ならば10年単位で行いたいところです。ところがどこの国も資金が確保できるのはせいぜい2-3年が限界です。資金を確保し続けることが出来るのが一番良いですが、小さなつながりをずっと維持することも大事でしょう。」
大浦湾の自主ルールによる海洋保護区作りはまだまだ先が長いですが今回いただいたアドバイスをもとに進めていきたいと思います。
ノレッジカフェという場を提供していただいたSDCCのみなさま、ありがとうございました。