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「持続可能な開発のための生態系を活用した災害リスク削減研修」に参加してきました

2012.07.07
活動報告

東日本海岸調査では、被災地の生態系についていろいろと調べ議論することが多いのですが、7月5~6日には仙台国際センターで開かれた、「持続可能な開発のための生態系を活用した災害リスク削減研修*」(国際自然保護連合(IUCN)主催)に参加しました。

国内外の政策決定者や専門家が招かれ、生態系に対する災害リスクの考え方、脆弱性の評価の方法、空間計画を策定する方法、グリーン復興のツールキットなど、IUCNやUNEP(国連環境計画)が過去のインドネシア、スリランカでの津波被害、四川省での大地震、ハイチやアメリカにおけるサイクロンの被害などから経験した、災害リスク削減に関する経験や情報を共有し、東日本大震災の復興に活かすために企画されたワークショップです。ベトナムやタイなどでも実施されたとのこと。

研修参加者は復興に関係する林野庁、環境省、国土交通省、市町村などに加えて大学、NGOなどでした。

災害リスクをどうとらえるかですが、例えば防潮林などは、

  • 「科学的には津波被害を軽減するものではないが、その他の生態系サービスを人間にもたらすと言う意味で、復元する必要がある」
  • 「減災効果については科学的に照明されていない砂防ダムができてしまったために、本来住宅を建てるべきでない場所に住宅が建ってしまった例」(ネパール)
  • 「緊急性や成果を求めるあまり避難所が建てられた後に二次災害が生じてしまった例」(スリランカ)
  • 「釜石市本郷地区のように1933年の津波被害で高台移転が行われたにもかかわらず、その後新たな堤防ができてしまったために低地部に住宅が建てられてしまった例」

など、海外や日本のベストプラクティスやバッドプラクティスが具体的な事例で紹介されており参考になりました。

また、国土交通省からは防潮堤の高さを決める基準や36の市町村から出された復興計画に基づいて、移転やかさ上げ、現状維持などの復興計画が進められていることが紹介されました。

しかし、南三陸町や仙台市の担当者にこのことを確認してみると、この復興計画は市町村の中できちんとコンセンサスが得られたものでなく国交省が主導して作成されたといった話があり、意見の齟齬が明らかになっています。

植林事業なども林野庁やNGO、企業などが進めていますが、各主体が横断的に意見交換しているわけでもなく、それぞれの考え方によって事業展開されていることもわかりました。

IUCNの担当者が、Green Recovery and Reconstruction Trainingツールキットの話しの中で、緊急措置のため簡易なアセスの必要性なども効果的なアイデアとして述べていましたが、復興後のことを考えるとあまり性急に復興事業をすすめていくことが本当に地域にとって望ましいことなのか、地元不在で外部の意見だけで復興がすすんでいないかどうか考えさせられました。

* Partnership for Environment and Disaster Risk Reduction (PEDRR)

(保全研究部・朱宮)

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