第3回沖縄県生物多様性地域戦略(仮称)策定検討委員会を傍聴しました
沖縄県生物多様性地域戦略策定委員会の第3回目を2月14日に傍聴しました。
まずは事務局をつとめる沖縄県自然保護課から、事業全般の報告とヒアリング・ワークショップ実施状況について説明がありました。
生物多様性保全について多くの県民は理解しているとの報告でしたが、それに対し、委員からはヒアリングをする相手が偏っていると指摘がありました。意見聴取に応じているのは、何らかの形で生物多様性保全で利益を受けている人たちばかりです。
県民の考えを広く反映させるには、生物多様性を保全することで何らかの形で行動などを制限される供給サイド(一次産業従事者など)の人たちの意見を聞かなければ、意見の対立すら起こらないであろう、という非常に厳しい指摘がなされました。
その後、 本題である沖縄県生物多様性地域戦略のたたき台の検討に入りました。頼もしい委員の議論の結果が反映されており、ざっと目を通したところ、米軍基地が存在することにより生じる問題や普天間飛行場・嘉手納飛行場の問題、泡瀬干潟の重要性についても触れられています。
しかしよく見るとさまざまな問題点があります。
委員からは「目的があいまいである」、「土地利用や開発という言葉の利用を避けずに、きちんとどこかで『制御が必要』と書き保全を進めること」と指摘がありました。
それに対し農業協同組合の委員からは、「制御をされたら困るので、『損失の防止と抑制』等の厳しい言葉は省いて欲しい」との発言がありました。
その点、愛知ターゲットは良くできており、『作物の遺伝的多様性の維持』とある。これならば両立が可能なのではないか。この戦略案はあちこち言葉が不足しているから誤解が生じる。もっと生物多様性をいろんな角度から見る文章が必要である」という指摘がありました。
また印象に残ったのは横田委員(琉球大学)のご意見でした。
昨今の移植や栽培を取り上げてそれを「生物多様性を増やす」手段としてしまいがちな議論に、「沖縄にはまだ手つかずあるいは原生的な自然が多く残されている。そこを無視して『生物多様性を高くする』と書くのは受け入れられない。植林や栽培、外来種の移入は多様性を高くする方法ではない」と重要なご指摘がありました。
最後に吉川委員(沖縄・生物多様性市民ネットワーク)からは「制度との整合性がないと地域戦略を現実のものとしていくのは難しい」という指摘がでました。
NACS-Jもこれまでの進捗を見つつ、事務局をつとめる沖縄県自然保護課とさまざまな意見交換をしてきましたが、今後も進捗を注視していきたいと思います。
沖縄県生物多様性地域戦略についての資料は以下のサイトにも掲載されています。
●沖縄・生物多様性市民ネットワーク 地域戦略
http://okinawabd.ti-da.net/c187564.html
●沖縄県自然保護課 生物多様性地域戦略策定作業関連情報
https://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/shizen/hogo/bd_okinawa_senryaku.html
(安部真理子/保護プロジェクト部)