【配布資料】今日からはじめる自然観察「花ごよみをつくってみよう」
<会報『自然保護』No.526(2012年3・4月号)より転載>
このページは、筆者に、教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。
ダウンロードして、自然観察会などでご活用ください。
あちこちで花が見られる季節になってきました!
あなたのお気に入りの場所でどんな花が咲いているか、1年を通してノートにメモしてみませんか?
一覧表にすれば、あなただけの「花ごよみ」ができあがります。
佐藤恭子/神奈川県植物誌調査会。故・浜口哲一氏
(元平塚市博物館館長、元NACS-J理事)に師事
「花ごよみ」、それは四季を通じて同じ場所で観察を重ね、植物の開花状況を記録したもののことをいいます。下の表は神奈川県のある里やまでつくった花ごよみの一例です。このような花ごよみをつけることには何か意味があるのでしょうか。
- 「いつごろ」「どこに行く」と「どんな花が咲いている」かを知る指針になる(例えば桜のお花見など)
- 同じ場所を根気強く見続けることで、最初は気づかなかった発見がある
- それぞれの植物の一生(生活史)を知るきっかけになる
- 長く記録をとることで、地球温暖化など気候変化の影響を考える参考になる
- 環境教育の方法として有効など、良いことがたくさんあるようです。何よりも植物を通して季節の移り変わりを感じるのは楽しいことではありませんか?!
生きものたちの食卓を知る
では、野生の生きものにとって「花ごよみ」とは何なのでしょう。下の表は、マルハナバチの目から見た花ごよみでもあります。ここに書かれている10種の植物は皆、マルハナバチが花の中にもぐり込んで蜜を集められる植物です。早春のモミジイチゴから晩秋のリンドウまで、次々と開花し続けるこの里やまはマルハナバチにとって生活しやすそうな場所だということが分かります。
しかし、開発などで植物相が変わり、たとえひと月だけでも暦に空白ができてしまったら……それは、成虫の食料はもちろん花粉と蜜で幼虫を育てるにも、巣をつくるにも花に頼って暮らしているマルハナバチには死活問題。ここで生きていくのは無理かもしれません。
故 浜口哲一さん(元NACS-J理事)は花ごよみのことを「森のメニュー」と表現されています。どんな植物がいつ花を咲かせ、いつ実が熟するのかということは、その場所が昆虫や鳥にどのような食事のメニューを提供しているかということです。花ごよみをつくることで、どのような生きものが生息しうるのかが推測できて、自然を深く理解していく手がかりになるというわけです。
身近なフィールドで花ごよみをつくって、森のメニューの発見に挑戦してみてはいかがでしょうか。
▼画像をクリックすると大きくなります
<クイズの答え>
A:ヤマボウシ→c、B:クサギ→b、C:センニンソウ→a