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11月8日 SBSTTA(2日目) 主要論点のまとめ(途中経過)

2011.11.11
活動報告

icon_douke.jpg道家です。

11月8日、第15回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA-15)の2日目は、午前中に、愛知ターゲットへのコメントの続きを行い、その後2つの作業部会に別れて個別議題を検討しました。作業部会1では、侵略的外来種(Invasive Alien Species)、作業部会2では内陸水(Inland water)のテーマについて意見表明を行ないました。

SBSTTAコンタクトグループ夜は、愛知ターゲットが達成されたかどうかを測る指標、各目標の解説(Technical Rationale)について、その詳細を議論するコンタクトグループが開催されました。

コンタクトグループの様子→

SBSSTAでのNOO法人田んぼの岩淵氏今回は、政府だけではなく、NGOも多く参加しています。サイドイベント「CHALLENGES AND HOPES FROM ECOSYSTEM RESTORATION」では、NPO法人田んぼの岩渕さんが、3月11日に起きた東日本大震災後の生態系の変化を市民調査でしらべていること、田んぼの復元活動の事例を紹介されて、大きな拍手がありました。

サイドイベントで紹介する岩渕さん(NPO法人田んぼ)→


<愛知ターゲットや、指標に関する議論の経過(11/8まで)>

SBSTTAでは、愛知ターゲットの解説文と、指標について最初の意見表明を終えました。愛知ターゲット解説文については、おおむね分かりやすく良いガイダンスであるという主張が多く、細かい文言を修正するような議論はやめようという雰囲気があります。

IUCNはこの解説文を各国の言語に訳し、もっと、愛知ターゲットの理解を広めていくために活用しようと提案しています。 ちなみに、IUCN-Jのにじゅうまるプロジェクトの各目標の解説文はこの解説文(2010年12月段階の事務局案)をベースに作成されています。

意見が多いのは、指標についてです。

専門家会合から提案された利用可能と考えられる指標は90近くあり、既に情報が十分ある(カテゴリーA)、世界レベルで使う指標として必要だが、情報が不十分、優先的に開発する(カテゴリーB)、地域レベルでの活用の可能性がある(カテゴリーC)と分類しています。その上で、12のヘッドライン が専門家会合から提起されました。

多くの国はこれを暫定的な指標と認めつつ、各国で指標をどう作り、いつまでにどのように報告し、生物多様性条約事務局からどのような支援があれば実現できるかを検討しています。このために作られた生物多様性条約のウェブサイトについても歓迎する発言がありました。

途上国の多くは、科学的データベースもない中で、指標を作り上げるのは難しいとして、キャパシティービルディング(能力開発)の必要性や、指標の最小セットを作ってはどうかなどの意見が出ました。他には、指標は、解説文でも言及するようにしようというアイデア、国家戦略とのリンクの重要性を指摘する意見も多数を占めていました。

市民団体からは、指標についてはあらゆるレベルで市民参加が重要であることが指摘され、SBSTTAで常にこの指標の向上と状況評価をするべきという提案をしました。

IUCNは、国内目標について、各国が愛知ターゲットをベースに目標を上乗せ(add up)しないと世界目標の達成は出来ないとして、COP10の盛り上がりを維持し続けようと訴えました。

状況としては、政府間で深い対立がある訳ではなく、どう指標を現実に活用し、フォローしていくかというアプローチで意見の食い違いがあるようです。 二日目の夜に開かれたコンタクトグループでは、各国の意見表明をまとめた文書に対する全般的な意見が出されました。

まだ、交渉というレベルの議論ではなく、理解を図るためのエクササイズという状況です。それでも幾つか論点が見えてきました。

1. 文章をSBSTTAを主語にした文書とCOPを主語にした文書に切り分けることになりそうです。すなわち、COP11までの間にやるべきことと、COP11後(2012年9月以降)にやるべきことを整理するという論点。

2. 指標が確立していない目標(目標1,2,3,7,13,16,17,20)をどうするか。

3. 目標と指標の相関(例えば、「生物多様性という言葉を知っている人の割合」という指標があったとして、その数値を持って目標1の成否を判断してよいのか、それとも複数の指標の達成状況を組み合わせたヘッドライン指標を作って判断するのかといった議論)

4. 解説文の取り扱い(愛知ターゲットの解説文は、COP10前の第14回のSBSTTA後に修正し、COP10の成果を踏まえて修正し、指標に関する専門家会議を踏まえて修正してきました。いくつかの国が現状の解釈について意見があるようで、この取り扱いをどうするかという議論がありました)
 

<生態学的復元について>

にわかに注目を集め、特に、愛知ターゲットの14、15に関係があるとして、国際生態学的復元協会(International Society of Ecological Restoration)が大きく協力する形で、今回のSBSTTAで議論の対象となりました。

COP11では、生態学的復元を進める手法、または、ガイダンスの採択をめざすこととなっています。

用語については、言葉が乱立している感があり、degradation(劣化)や、restorationとrehabilitationの違い、サイドイベントでは、restorationの一環として、野生生物のreestablishment(再定着?)という言葉も出て、整理と定義付けが課題となりそうです。

土地利用計画などの大枠の中で復元を考えないと長期的には復元は達成しないという意見(コロンビア)や、自然災害の緩和(タイ)、貧困改善や生活の質向上の文脈における生態学的復元の重要性(南アフリカ)、気候変動という文脈での重要性などが指摘されました。上流域/下流域との連携を考えないと意味がないため国際協力を入れたい(バングラデシュ)といった意見なども出ました。

フィリピンは、生態学的復元という名で行なわれている事業の多くが、植林それも単一樹種の植林だったりすることがあり、特に熱帯雨林における事業では、注意が必要という大事な指摘をしました。さらに、「海洋も含めた、構成生物学によるBiomedicationに懸念を抱いている」という発言をしました。おそらく、「ハブ退治のためにマングースを放つ」に近い生物を人工的に生態系に投入することで環境改善を図ろうという動きがあるのかもしれません。このようなよく分からない事業は、とかく途上国が実験場のようにされることが多いのです。

IUCNは、生態学的復元そのものの重要性に大きく賛同し、保護地域における生態学的復元の優良事例をまとめたガイドラインを2012年に発行することを紹介しました。一方で、「生態系悪化のそもそもの原因に取組んだ上で、生態学的復元に取組むという順序を決して忘れてはいけない」という釘止しもしっかりしました。
 

<外来種に関して>

主として、生物多様性条約外の国際条約やルールに関して、いかに生物多様性条約が役割を果たすかという論点があります。

いずれも名目上は「施設内利用」すなわち野外に放逐しないことを想定したルールではありますが、外来種の侵入経路として大きな問題となっています。また、これらの国際ルールには生物多様性条約が大事にしている基本原則の一つ「予防原則」が必ずしも明記されていないことも課題の一つです。

また、愛知ターゲットの9に基づき外来種の侵入経路の特定をどのように進めるかという論点もあります。特に島嶼国の関心が非常に高く、これまで発言のほとんどなかったセントルシアや、東ティモールなども発言をしています。

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