泡瀬干潟「次世代に禍根だけを残す 埋立事業を中止すべき」
埋立工事再開の抗議声明
中城湾港・泡瀬干潟埋立事業 工事再開の抗議声明(PDF/142KB)
中城湾港・泡瀬干潟埋立事業 工事再開の抗議声明(コメント)
沖縄の生物多様性の損失を拡大し、持続可能な社会の形成とは乖離し、次世代に禍根だけを残す埋立事業を中止すべきである
2011年10月14日
公益財団法人 日本自然保護協会
保護プロジェクト部 部長 大野正人
日本自然保護協会は、泡瀬干潟において社会的な合意を得ないまま、埋立工事を再開した沖縄市、沖縄県、政府に対して、下記の点から強く抗議する。
- これまでの第Ⅰ区域工事によって、周辺の干潟と海草藻場、サンゴに甚大な影響がでている。影響を回避できていないことが科学的に明らかでありながら、埋立工事を再開したことは、「影響がない」としてきた環境アセスメントに反する行為である。
- 公金支出差し止め判決を受けて変更した新計画は、第Ⅱ区域を埋め立てずに保全を図るとした。第Ⅱ区域は海草藻場と干潟が広がり多様な生物が生育・生息している貴重な自然環境である。しかし、このまま第Ⅰ区域を埋め立てれば、第Ⅱ区域の自然環境にも影響を及ぼすことは自明にも関わらず、第Ⅱ区域の環境現況調査、影響予測・評価、保全策は何もなされていない。これでは、今後の環境監視を科学的に行うことを完全に放棄した姿勢である。
- ちょうど1年前に生物多様性条約締約国会議(CBD/COP10)を名古屋で開催した。日本政府は、「自然と共生する社会の実現」のビジョンのもと「生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急な行動を実施する」という「愛知ターゲット」を、世界各国を説得して導き出した。その議長国である日本が、経済合理性のない公共事業を強行したことは、国際社会からも認められるものではない。
- 東日本大震災の経験から、沿岸部での人々の暮らし方や公共のあり方が問われている。巨大なエネルギーで押し寄せる台風や津波などから、サンゴ礁、干潟や藻場、海岸林が果たす緩衝地帯として機能、埋立地に予想される液状化現象や津波警戒時の避難などのリスク対策は何ら考慮していないことは、大きな問題である。
これ以上、生物多様性の損失を拡大し、持続可能な社会の形成とは乖離し、将来の次世代に禍根だけを残す埋立事業を、即刻中止すべきである。
以上