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【配布資料】今日からはじめる自然観察「春の赤い葉 秋の赤い葉」

2011.10.31
解説

会報ページ画像

【今日からはじめる自然観察】春の赤い葉 秋の赤い葉(PDF/1.1MB)
<会報『自然保護』No.524(2011年11・12月号)より転載>
このページは、筆者に、教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察会などでご活用ください。

どんなときにきれいな紅葉になるの?1本の木ではどこから色が変化する?
そういえば、あの木の芽生えは赤かったかな?今回は赤い葉っぱに注目します!

松谷 茂(京都府立植物園名誉園長/京都府立大学客員教授)


葉が美しく色づくには?

紅葉シーズン最初のテレビ映像は、北海道の大雪山の光景です。標高の高いところから紅葉がはじまり、平面的には東北、関東、近畿へと紅葉前線は南下します(桜前線とは逆です)。でもこの紅葉、美しい年とそうでない年があります。10年に一度ほど紅葉の綺麗なシーズンの気象データをみますと、綺麗に紅葉する条件が分かります。

■気 温→
本州の平野部なら、11月に入ってからの最低気温が徐々に低下し5~6度まで下がること。また、1日のうちの最高気温と最低気温の差が大きいこと。
■太陽光→
昼間の十分な日照。
■湿 度→
空気中や土の中に適度な水分があること(短時間の集中豪雨はマイナスに作用)

最近、これらに加え、空気が澄んでいる(ちりが少ない)ことも要因のひとつと言われています。山間部の川沿いの紅葉が美しい理由が分かります。

秋になって気温が下がってくると、ほとんどの落葉樹は、緑色の元となる葉緑素の働きが弱くなり、いずれなくなります。これは老化現象と言えますが、この過程で、アントシアニンという赤色の色素を新たにつくる樹木と、つくることのない樹木に分かれます。前者は赤く紅葉し、後者は、もともと葉にあった黄色が現れてくる(葉にはもともと緑色と黄色があり、緑色がなくなると相対的に黄色が見えてくる)ことから黄色に黄葉するのですが、なぜ、新たな赤い色素がつくられるのかは、よく分かっていません。

同じ木に赤や黄色の葉が混じっていることがありますが、これは、葉緑素がなくなる途中のアントシアニンがつくられる過程で、もともと葉にある黄色が一時的に現れたからです。一枚の葉にも、このグラデーションが見えることがあります。太陽がよく当たっている部分と陰になっている部分を比べてみてください。日々色が変化していく様子を観察していると「植物も (状態が)動く 」ことが実感できます。

秋以外の赤い葉っぱ

実は、紅葉は春の芽吹きにも見られます。落葉樹ではヤマザクラやケヤキ、常緑樹ではベニカナメモチやクスノキなど、個体差があり秋の紅葉ほどの派手さはありませんが美しいものです。

なぜ赤い新葉をつけるのかについては、秋の紅葉と同じく、まだ詳しく解明されていませんが、諸説あります。芽生えの柔らかい葉は虫に食べられてしまう恐れが高いので、葉緑素に多くの投資をしないという説、赤い色素が紫外線から葉を守るという説、赤い色素が寒さから葉を守るという説もあります。

ほかにも、厳冬期、スギは枯れたのではと錯覚するほど、赤っぽくなることがあります。イワカガミも、冬の低温による紅葉現象がよく知られています。季節を通して、赤い葉っぱをいろいろ観察してみてください。

No524今日から始める自然観察ハナノキ一本の木で見てみると、朝日がよく当たる木の頂や東~南側にある葉から紅葉が始まり、太陽光に関係があることが分かる。(写真上:ハナノキの紅葉)

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<クイズの答え>
ウルシ科→:ハゼノキ、:ツタウルシ(今回ご紹介できなかったヤマウルシにも注意。)
B:ナナカマド、Cニシキギ、Dシラキ

写真協力 A、C:伊藤信男 B:茅野恒秀、E:朱宮丈晴

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