風力発電に対する環境影響評価の方向性が決まりました
パブコメ・検討の結果、アセスの対象は1万kWから
今春から、環境省の環境影響評価課が「風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」を行い、NACS-Jも関係団体としてヒアリングを受けていました(2011年5・6月号参照)。この検討会の報告書案への意見募集(パブリックコメント)が5月16日から6月10日に行われました。
結果は総数170通(意見の件数:890件)で、内訳は企業23通、団体16通、自然保護団体・NPO15通、個人116通とのこと。NACS-J会員の方々からの意見もあり、たいへん役立ちました。6月18日に最後の検討会があり、国民意見も反映させ報告書がまとまりました。
もっとも注目が集まり、委員だけでなくパブリックコメントの意見も多かったのが、「どのくらいの規模の風力発電計画から、国のアセスメントが必要か?」という規模についての要件でした。事業者からは、風車の数として17~26基にあたる「5万kWからにし、それ以下の規模のものは自主調査で処理する」との意見が出されていましたが、パブリックコメントでも、アセスメントが必要な規模は低めに設定するべきとの意見が多数を占めました。
その結果、報告書では、「環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある規模として1万kWとすることが適当。また、7500kW以上のものでも必要に応じて調査をしなくてはならない」とされました。これは、風車3~4基からということになります。さらに、「例えばタカ類にとっては、これ以下の土地改変であっても、致命的となり得ることから注意を要する」とのただし書きも付いています。
いろいろな渡りのコースを持つワシやタカを含む渡り鳥や、一年を通して決まった行動圏を広く持つ留鳥の猛禽類には、移動や生息にとって重要な範囲に大型の風力発電所ができれば致命的で、これらの場所を避けることが何より重要です。今後、環境影響評価に基づく政令・省令として具体的なルールが改正される段階となります。
▲条例で風力発電を環境影響評価(環境アセス)の対象としている自治体とアセス対象の規模
(横山隆一/常勤理事)
ご参考
報告書(案)対するパブリックコメントの結果と最終報告書は、下記のウェブサイトでご覧になれます。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13908