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フォーラム「地域を知るコツ!」 in 沖縄開催! ~生物多様性地域戦略につながる第一歩~

2011.08.25
告知

台風のため延期となっていました本フォーラムを、10/8(土)に改めて開催します。
>>>フォーラム案内チラシはこちら(PDF/1.14MB)

地域の自然を守るには、まず現状を把握することが必要です。
自然を把握する調査には、主に行政や研究者やNGOなどが行う大規模・広域的な調査と、地域の市民が地域密着で行う調査の二通りがあります。どちらも大切なデータとなりますが、現在、市民調査の結果が行政の計画などに活用されることは少ないため、今後どのように生物多様性地域戦略に反映していけるか、つまり市民が地域戦略などの計画づくりに参加することができるのかが大きな課題となっています。

フォーラムでは、大規模・広域調査と市民調査それぞれの特徴や意味を掘り下げ、「市民と行政が対話しながらつくり上げていく生物多様性地域戦略」につながる第一歩としたいと思います。
第1部では、調査にかかわる研究者やNGOスタッフなどが、さまざまな取り組みの実例を紹介します。
第2部では来場者も参加してグループディスカッションを行い、「地域を知るコツ」をともに考えます。


 

第483回沖縄大学土曜教養講座/NACS-J生物多様性の道プロジェクト
フォーラム「地域を知るコツ!」
~生物多様性地域戦略につながる第一歩~

 

20110806forum.jpg
2011年10月8日(土)午後1時~5時
沖縄大学 2号館306教室

対  象: 一般の方、エコツアーガイド、市民調査経験者、NPO、行政、教員、学生など
参加費: 無料
資料代: 300円(要申し込み)

主  催: 日本自然保護協会(NACS-J)
共  催: WWFジャパン、沖縄大学地域研究所、沖縄・生物多様性市民ネットワーク
後  援:沖縄環境ネットワーク、環境省那覇自然環境事務所、沖縄県サンゴ礁保推進協議会

【申し込み先】
NACS-J 保護プロジェクト部 安部
FAX: 03-3553-0139  Eメール: abe@nacsj.or.jp

(※メールアドレスはスパムメール対策のため、@を全角にしています。半角に変え送信してください。)

【会場についての問い合わせ先】
沖縄大学地域研究所 TEL:098-832-5599

<プログラム>
13:15 第1部:話題提供「地域を知るコトで見えてくる」 (各15分)
(1) 「沖縄島のサンゴ礁の現状(沖縄県自然保護課課長・富永千尋)」
平成21年度サンゴ礁資源情報整備事業の結果とそれに基づく保全計画を紹介。

(2) 「久米島応援プロジェクトによる久米島での活動事例」(WWFジャパン・権田雅之)
WWFジャパンが作成した南西諸島マップや久米島で展開しているプロジェクトの紹介。

(3) 「地元の住民自身がモニタリングをすることの重要性-把握→比較→展望、数字(データ)
から言葉(認識)への脱却-」(琉球大学/沖縄県サンゴ礁保全推進協議会会長・中野義勝)
地域の人たちが自分で調査データを取ることの重要性を、幾つかのコミュニティを例に紹介。
(4) 「市民調査で自分たちの地域づくり」(NACS-J事務局長 開発法子)
科学・歴史・文化などのさまざまな市民調査の紹介。市民調査から保全計画づくりへ。

14:45 第2部:グループディスカッション「地域を知るコツ!を考えよう」
(ファシリテーター:しかたに自然案内・鹿谷麻夕)
1テーブル5~6名のグループを作り、当日配布する「地域を知るコツ!アンケート」をもとに
ディスカッション。

<講演者プロフィール>
◆柴田泰邦(しばた やすくに) 環境省那覇自然環境事務所次長
1993年、京都大学農学部卒業後、環境庁(当時)に入庁。北海道(大雪山)などの現地や環境省本省に勤務し、特に野生生物課では久米島のキクザトサワヘビ保護区の指定や漫湖鳥獣保護区のラムサール条約登録、仲の神島鳥獣保護区の現地調査などに従事。国土交通省国土計画局への出向のほか、人事院在外研究員として米国国立公園局に派遣。2010年9月より現職(那覇自然環境事務所統括自然保護企画官(次長))。

◆富永千尋(とみなが ちひろ)  沖縄県自然保護課課長
沖縄生まれ、沖縄育ち。琉球大学理学部大学院にて海洋学を専攻する。沖縄の海と関わる仕事を目指し、卒業後、沖縄県に就職、農林水産部漁政課、企画部科学技術振興課研究評価班長、観光商工部新産業振興課技術支援班長、産業政策課副参事を経て、環境生活部自然保護課長に就任する。1993年には沖縄県人材育成財団の援助で沿岸域管理(CZM)をテーマに米国留学の機会を得るなど、海と人との関わりに興味を持っている。

◆権田雅之 (ごんだ まさゆき) WWFジャパン 自然保護室 南西諸島プロジェクト担当  
愛知県生まれ。日本大学農獣医学部(当時)を卒業。在学中 および卒業後、ワオキツネザルやコモドオオトカゲの生態調査プロジェクトに参加。その後、オーストラリアのニューイングランド大学地域科学・ 自然資源学部修士課程で、国立公園のオーバーユースと地域に与える影響などを調査。同課程修了後は、環境コンサルタント会社勤務を経て、現 職。WWFジャパンでは、助成金支援事業担当、総務担当などを経て、本年より現職に着任。

◆中野義勝(なかの よしかつ) 琉球大学/沖縄県サンゴ礁保全推進協議会会長
琉球大学大学院理工学研究科生物学専攻修了(理学修士)。サンゴの生物学とサンゴ礁の生態学、人とサンゴ礁の関わりの基礎についての理解とその展開として環境教育などを通してサンゴ礁保全に取り組んでいる。琉球大学熱帯生物圏研究センター技術専門職員。
沖縄県サンゴ礁保全推進協議会会長、日本サンゴ礁学会サンゴ礁保全委員会委員長。

◆鹿谷麻夕(しかたに まゆ)しかたに自然案内
東京生まれ。1993年来沖、琉球大学理学部海洋学科にて海洋生物学を学ぶ。東京大学大学院理学系研究科中退後に沖縄に戻り、2002年より「しかたに自然案内」主宰。県内の小中学校や市民グループを対象に、海の自然観察や環境教育、環境保全の活動を行なう。珊瑚舎スコーレ講師、沖縄大学・琉球大学非常勤講師。

◆開発法子(かいはつ のりこ) 日本自然保護協会事務局長 
日本自然保護協会に在職して24年。これまで国立公園サブレンジャーや自然観察指導員の養成、環境教育事業、東京湾三番瀬の保全活動等に携わってきた。2010年より事務局長をつとめ、沖縄・泡瀬干潟の海草藻場モニタリング・保全活動のほか、海岸植物群落、里やま調査など市民参加型地域自然のモニタリング調査手法の開発と実施、「人と自然とのふれあい」研究に取り組んでいる。

◆安部真理子(あべ まりこ) 日本自然保護協会 保護プロジェクト部 
大学、大学院にて生物学と生化学を専攻し、WWFジャパンに8年間勤務。オーストラリアのジェームズクック大学院修士課程に留学し、続いて琉球大学博士課程にてアザミサンゴの多様性に関する研究で博士号(理学)を取得。1997年に日本国内でのリーフチェック立ち上げに関わった一人であり、以来コーディネーターをつとめている。沖縄リーフチェック研究会会長、日本サンゴ礁学会評議員、沖縄県サンゴ礁保全推進協議会理事。現職、日本自然保護協会では2010年4月より沖縄の問題や日本の沿岸の問題を担当している。

<講演要旨>  
●「沖縄県のサンゴ礁の現状-サンゴ礁資源情報整備事業の概要について-」
沖縄県自然保護課長 富永千尋

おきなわのサンゴ礁は、その豊かな生物多様性により、観光資源や漁業資源としての恵みに加え、防災や文化の面でも私たちに多くの恵みを与えています。しかしながら近年、赤土等の流出、オニヒトデの大量発生、白化現象などの影響で健全なサンゴ礁は減少している状況にあります。
そのため、県では、サンゴ礁の保全再生施策を進めるため、2009年度からサンゴ礁の全県調査を実施しています。調査は3年間を予定しており、2009年度は沖縄本島周辺海域、2010年度は八重山、慶良間、久米島海域、2011年度は宮古海域において、マンタ法とスポットチェック法による調査を行っています。
これまでの調査によると、沖縄本島周辺の礁斜面では、全体のほぼ8割がサンゴ被度10%以下と全体的にサンゴ被度は低いが、部分的にサンゴ被度の高い群集が存在していることや、八重山海域・慶良間海域・久米島周辺の礁斜面は、沖縄本島周辺に比べると被度が高い状況にあることが示唆される一方、オニヒトデの大量発生の影響が懸念される等の情報が得られつつあります。
2011年度は、調査の最終年度に当たるため、これまでの調査の成果をもとに、総合的なサンゴ礁保全・再生に向けて、県の関係部局、市町村、関係団体と連携し、地域特性に応じたサンゴ礁の保全・再生・活用計画を検討したいと考えております。

●「久米島応援プロジェクトによる久米島での活動事例」
 WWFジャパン 自然保護室 南西諸島プロジェクト担当 権田雅之

WWFジャパンは、2006年10月より2009年9月までの期間、「南西諸島いきものマッププロジェクト」を実施し、生物多様性上重要な地域の評価・選定を行ないました。この成果を基に、南西諸島地域での優先保全地域のうち、赤土流出による生態系への影響が強く認められる久米島において、地域の保全活動を支援することを目的として、2010年10月より3年間の期限で久米島応援プロジェクトを開始しました。
久米島応援プロジェクトは、三井物産からの助成を受け、生態学、赤土流出調査、地域協議会運営、社会学、広告業といった分野の専門家の連合体として構成されています。またプロジェクトのターゲットを「地域の暮らしを支える久米島の豊かな自然環境(森・川・海)の保全」と定め、コア活動となる赤土流出防止対策としてのグリーンベルトや緑肥によるマルチング作業を、地元の市民団体や行政に働きかけながらサポート。さらにコア活動を補完する目的で、地元小中学校や島外学生を受け入れての環境教育活動、イベントごとの広報支援活動、陸域から河川や沿岸域にかけての科学的調査モニタリング活動を、プロジェクトの各分野担当者が分担しています。
久米島応援プロジェクトの試みを通して得られた、地域の保全活動促進・支援モデルの知見は、事後に取り纏めを行い、南西諸島の他地域への応用展開や、各地で活動する市民団体関係者への思料の一助となるよう公表を予定しています。

●「地元の住民自身がモニタリングをすることの重要性 -把握→比較→展望、数字(データ)から言葉(認識)への脱却-」 
琉球大学/沖縄県サンゴ礁保全推進協議会会長 中野義勝

自然環境を客観的に評価することは、自然環境と人がどのように接するかを議論する上で重要で、現在まで様々な工夫がなされてきました。一般的には数値的に評価することが望ましいとされますが、地図などに図示することや組み写真などで可視化することで情報を共有することも可能です。自然環境を評価する要素はその種類も多く、実際にはいくつもの方法を組み合わせて全体像を探りながら、評価を共有することになります。
サンゴ礁生態系はその多様性において熱帯雨林の生態系と比較されることからも、サンゴ礁の保全とは「多様性の保全」に他なりません。生物も含めた多様な要素が複雑に絡み合ったネットワークの調和を理解し、人が歴史的にこれらとどのように関わってきたかを理解することなしに、全体の評価はできません。
地域に蓄積された膨大な観察所見は、生活感を伴った様々な言葉で伝えられてきました。地域の意志決定に大きな意味を持つこれらの言葉に普遍的な意義を与えるとともに、将来の批判に耐える展望を検討するための現状把握の手法としてモニタリングの果たす役割は重要です。モニタリングによって記述される数値を正しく読み解き、地域の住民の言葉に定着させる作業を専門家ばかりでなく住民をも含めて取り組むことが、地域のサンゴ礁の多様性保全のために必要な評価の共有には有効であろうと思われます。

●「市民調査で自分たちの地域づくり」 
日本自然保護協会事務局長 開発法子

地域の自然や生き物、自然と関わりあって成り立っている暮らしや文化、産業を知ると、自分が暮らす地域への愛着が湧いてきます。これらを調べることは、専門家でなくてもできます。これまでNACS-Jが実施してきた、市民による「里山保全活動調査」「海岸植物群落調査」「里やまモニタリング」「人と自然のふれあい調査」「五感で捉える生態系サービスモニタリング」などを紹介し、みなさんの活動のヒントになればと思います。
市民調査で自分たちの地域の独自のデータを得ることができれば、それは、地域のことを考えるときの貴重な資料となります(学校での総合学習や環境学習、緑地の保護や公園の整備など)。行政や事業者が実施しようとする地域のさまざまな計画に対して、自分たちの意見や思いを伝え反映させていくときの説得力のある根拠にもなります。
そこに住む者ならではの視点で調査を計画し、地域のよさを再発見して、身近な自然・生物多様性とともに生きる未来図を描くこと、を進めたいと考えています。
*このフォーラムは、平成23年度独立行政法人環境保全機構地球環境基金の助成を受けて開催されます。

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