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市民・NPOが主体的に作成する保全活動計画に、国や地方自治体は積極的な支援・対応策を

2011.07.02
要望・声明

 
>>生物多様性保全活動促進法「地域連携保全活動の促進に関する基本方針(案)」へのNACS-Jのパブリックコメント(PDF/ 176KB)

 

2011年7月2日

 

生物多様性保全活動促進法「地域連携保全活動の促進に関する基本方針(案)」への意見(パブコメ)

 

公益財団法人 日本自然保護協会 
大野正人 高川晋一

 

意見1:生物多様性の保全の担い手である市民・NPOから発意・提案によって作成される保全活動計画を最大限活かすために、地方自治体の主体的な協力が不可欠であり国の支援策をより明確にするとともに、国家戦略等の評価指標としても位置づけること。  
(該当箇所:P7、第2章2国の役割と施策)
COP10決議「愛知目標」、生物多様性国家戦略や地域戦略などで示される保全目標が地域ごとで実現されていくにはNPO・市民の主体的な役割がかかせない。地域のNPOの発意・提案によってできる地域連携保全活動計画(以下、保全活動計画)が行政計画として位置づけられることの意味は大きく、戦略目標の達成へ貢献することが期待される。一方で、この仕組みは、市町村自治体の理解と主体的な協力が得られなければ成り立たず、継続的な予算確保はもちろんのこと、各主体へのインセンティブを確保し、維持していくことこそが国の役割である。地域戦略の策定とともに地域保全活動が促進されることが、自治体の活力や魅力につながることを積極的に示していかなければならない。また、個々の保全活動計画の数や進捗を生物多様性国家戦略や地域戦略、生物多様性条約国別報告書等における評価指標として取り込み、成果や課題を公にしていくべきである。

 

意見2:土地所有や税制措置など保全活動の現場にかかわる現状課題に対して、国の役割として政策的対応を明記すること。  
(該当箇所:P7、国の役割と施策)
里地里山など各地の現場での保全活動が行きづまる現状課題として、①市街化区域での土地相続税が高額なため土地を売らざるをえない、②土地の所有者が不明なために保全活動の実施ができない、③生物多様性保全型の農林漁業の営みに対し、直接支払い制度・税制優遇制度がない、などがあげられる。これら保全活動の根本的な課題に関わる政策的対応を、国の果たす役割として明記すべきである。

 

意見3:生物多様性の保全が様々な施策へ組み込みこむために、①保全活動計画は既存の行政計画に調和・調整させることを前提としないこと ②協議会には部局が横断的に関与し波及効果をもたせること。
(該当箇所:P11(4)各種計画等との調和・関係者との調整、P15(2)配慮すべき事項)
本来、生物多様性やそれがもたらす生態系サービスは、持続可能な農林業や豊かな社会資本・福祉・公共サービスを支える礎である。大規模・効率化を目指した農地圃場整備が農地の生物多様性を失ってきたように、「環境保全」を掲げつつも既存の行政計画が必ずしも生物多様性の保全を組み入れたものにはなっていないことを踏まえ、保全活動計画を既存の行政計画に調和・調整させることを前提とせず、自立的な計画として扱うべきである。
保全活動計画の検討・実施をきっかけに、保全活動計画の保全対象や対象区域、活動を担う人々の活気が、「地域の財産」として都市計画や地域振興、教育福祉、産業等のなかでも位置付けられ保全され活用されていくことが重要である。市の総合計画や各部局の上位計画、それに基づく関係施策に波及させるためには、個々の保全活動計画の検討・実施運営にあったって、協議会事務局を担う市町村側にも多様な部局が横断的に関わるべきである。

 

意見4:農林漁業の産物に、地域連携保全活動がその商品価値を高めるブランド化や消費に貢献する役割もあることを位置づけること。  
(該当箇所:P7、多様な主体に期待される役割)
生物多様性の損失への圧迫要因・根本原因への対応はCOP10決議「愛知目標」でも各国が10年以内に取り組むべき義務であるとして採択されている。これらの対応のためには、産業構造や日常生活のサプライチェーンの中でも、生物多様性の保全や地域連携保全活動が価値付け・差別化されていく必要があり、多様な主体にその役割が求められる。特に、生物多様性保全型農林漁業による産物・製品が価値付けされ差別化されるよう、①生産と流通に関わる農林漁業者・企業は商品説明とブランド化、サプライチェーンの新設を進める、②国・地方自治体はそれに対する認証制度の整備や援助を促進する、③消費者はそれを積極的に選択・消費する、など重要な役割を担っていることを明記すべきである。

 

意見5:NPO等による作成の提案への自治体の判断基準の考えやプロセス、生物多様性保全の重要地域では積極的に採用するなどの要件を明確にすること。
(該当箇所:P10、第3章(2)NPO等による提案の取り入れ)
NPO等による保全活動計画作成の提案について、市町村の判断基準となる考えや客観性の担保が明確にされていない。計画の必要性や適切さが客観的に判断できる基準を「活動計画の作成にかかる手引き書」などで示すとともに、またその「必要性の判断」を誰が行うかについても、例えば市町村の環境審議会などに諮るなど具体案を示すべきである。またNPOからの提案の内容が、①最低限の要件(例えば、地権者との合意形成や、保全活動の実績や持続性など)を満たしている場合や、②生物多様性の重要地域(生物多様性地域戦略や都市マスタープラン等における保全上の重要地域、環境省の「重要植物群落」、「重要湿地500」や「典型的な里地里山」の選定地域など)を対象区域とした提案である場合においては、基本的に採用するといった基準を設け、積極的な促進を図るべきである。

 

意見6:保全活動がまだ十分にはない地域ついて、自然観察会や市民参加型調査、保全計画づくりなど保全活動の人材の育成・確保・継承を支援すること。
(該当箇所:P15、第5章2地域連携活動支援センター)
生物多様性の劣化が進む環境、特に保全上重要な地域においては、保全活動が行われていない地域が圧倒的に多く、NPO活動が既存していてもその活性化や世代交代など課題は多い。そのため、保全活動が新たに生まれ育てることを意図した、自然観察会や市民参加型調査、保全計画づくりなど保全活動の人材の育成・確保・継承についても、地域連携保全活動支援センターの役割として示すべきである。

 

その他意見
○ 活動計画に求められる内容として、①対象区域の生物多様性とその圧迫要因・根本原因についての現状分析、活動の内容として②圧迫要因に対して取り得る活動内容、③活動の実施状況と保全の成果(保全対象の状態)を評価するための具体的指標、④体制と役割分担、資金調達の方法などについても加えること。(該当箇所:P11、第3章-2保全活動計画の内容)
○ 地域住民やNPOが、保全活動計画におけるモニタリングや効果・進捗の評価においても重要な役割を担っていることを明記すること。(該当箇所:P7、第2章-3多様な主体に期待される役割)

 


<参考>
■環境省 報道発表資料 地域連携保全活動の促進に関する基本方針(案)についての意見の募集(パブリックコメント)について(お知らせ)

■環境省 資料 地域連携保全活動の促進に関する基本方針(案)[PDF 63KB]

 

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