日本の森林の基本法「森林法」が改正されました。放棄民有林の自治体管理が可能に。
今年4月、森林法が改正されました。NACS-Jは、改正のための委員会で意見を述べてきました。資源として全国で増やしてきた人工林を無駄にせず、生物多様性の向上につなげられるしくみとして注目しています。
現政権が進めている施策に、「森林・林業再生プラン」というものがあります。この施策では、日本の木材自給率を2020年までに今の約2.5倍の50%にすることが記されました。間伐放棄地を含め資源利用すると決めた森林を30~50 ha単位にまとめて作業道・作業路をつくり、今までは不採算で切り捨てていた間伐材を搬出できるようにしたり、材木利用できない幹や根・枝葉などをバイオマス燃料に利用し、新たな雇用も確保しようというものです。
しかしこの計画の大きな障壁は、小規模に所有された民有林の集約化が困難なこと、故人名義のままの放置林や、相続分割で境界や所有者が不明の森林が少なくないことです。林地は国土の7割も占めながら、林業衰退で地籍調査も遅れており、まったく手入れされていない人工林が野生生物の生息環境の質を下げ続けているという指摘も、全国で共通しています。
法律改正は「森林・林業再生プラン」を法制面で具体化するもので、要点は、自治体が所有者不明の森林の管理や整備を行えるようになったことなど以下の3点です。
また現在この法改正も踏まえ、「森林・林業基本計画」と「全国森林計画」の変更が林政審議会で審議されています。これらは、農林水産大臣が全国の国有林と民有林の管理のあり方、整備と保全のルールと具体的目標を定めるものです。基本計画には、地球温暖化対策と生物多様性保全への対応項目が入り、森林の多面的機能は、国有林だけでなく民有林にも求められ、各地域で発揮させたい機能ごとに区域を示すことになっています。
これらの計画が地域の生物多様性の確保に結びつけられるよう、強く意見を届けていきます。民有林の広がる地域で保護活動を進められている方々、ぜひ注目ください。
森林法改正の要点
①森林所有者が不在ないしは不明の場合でも、市町村長の判断で使用権を設定でき、調査のための立ち入りや作業路整備、森林整備(間伐などの手入れ)が実施でき、間伐放棄地を行政の手で管理できるようになる。
②現行の森林計画制度を見直し、森林所有者には届け出を義務付け、林地戸籍を整備する。
③国や自治体などがするべき仕事を明確にし、境界の確定、施業集約化の推進、特に重要な保安林の買い入れなどの規定の追加。
*付帯決議で、震災の復旧復興の資材を早急に森林から得られるよう施行期日を前倒して、公布後即施行される。
基本計画に入った地球温暖化対策と生物多様性保全の対応項目
- 京都議定書に基づく温室効果ガスの排出削減目標の達成と低炭素社会の実現。
- 生態系ネットワークの根幹となる森林の生物多様性の保全方針と針広混交林や広葉樹の森林への誘導などの手法。
森林の多面的機能
水源涵養、山地災害防止・土壌保全、快適環境形成、保健・レクリエーション、文化、生物多様性保全、地球環境保全、木材等生産。
(横山隆一/常勤理事)