風力発電の環境アセスの対象規模を 検討委員会に提案しています。
自然性を考えないままの発電施設建設はやめるべき
ほとんどが電力会社に売電しようとする民間事業者の自主調査で済まされ、わずかな地域で条例による影響調査が義務付けられているだけの風力発電所建設事業。風車を何本も建てるような発電所建設になると、自然への影響も少なくありません。
環境省は、この事業を国の法律に基づく環境影響評価(環境アセスメント)に入れる方針を決め、環境影響評価法の改正案が国会で通れば、計画段階に近い段階で環境アセスを行うことになります。しかし法案は継続審議になり続け、国の環境アセス制度では、どの程度の規模からをアセスの対象とするのかで意見が分かれています。
今回の東日本大震災・原子力発電所事故により、今後のエネルギー政策に自然エネルギーの積極的な利用が織り込まれそうですが、自然性をつかまずに立地を決めるようなことがあっては、事故が起きた原子力発電所と大差ないものになりかねません。
風力発電建設事業者の団体からは、「5万kWからにしてほしい」「それ以下は自主調査で処理したい」という意見が出されました(当初は15万kWと主張)。
しかし、5万kWという規模は、風車の数でいうと17~26基に相当。改変面積は「2000kWの中型風車1基あたり1ha」とのこと。また幅10mを超える工事用道路建設が麓から尾根上までつくられる問題もあるため、開発面積が17ha以上にならないとアセスの義務がないというのでは、景観や生物の生息地は守れないと思われます。
現在この検討は環境省の検討会で行われており、NACS-Jは、5000kW以上を対象とすべき、などの意見を届けてきました。
風力発電に関する意見発表を、風力発電検討会と衆議院環境委員会で行いました
規模の問題に関しては、
①火力発電所のアセスメントの対象規模は15万KW。それに必要となる敷地は5haなので、開発面積とワット数の比で考えると風力なら1万kWからとなる。この改変面積は中型の風車で5ha。1万kW規模ですら5ha以上の開発地を帯状につくろうとするものなので、これ以下であれば自主調査で済むというのでは自然性が守れない。
②もし仮に1万kWで線引きするなら、1基でも深刻な鳥の衝突事故の例があるため、鳥類の重要な生息地・中継地周辺での建設、ラムサール条約登録湿地、自然公園(国立、国定、県立)、鳥獣保護区の特別地域や希少生物種生息地の隣接地などは、規模に関係なく義務付けること、と主張しています。
環境省は5月に、この検討会の取りまとめ案に対する意見募集(パブリックコメント)を予定しています。皆さんからも、ぜひご意見をお出しください。
(横山隆一/常勤理事)
ご参考
風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」報告書の取りまとめ及び報告書(案)対する意見募集(パブリックコメント)の結果について(お知らせ)