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COP10議長国として自然破壊行為は やめるべき ~辺野古緊急合同調査

2010.11.01
活動報告

 
沖縄県名護市東海岸キャンプシュワブ前の辺野古の海域は沖縄島でも最大の海草藻場が広がり、海草を餌とするジュゴンの食み跡が観察されてきた場所です。ところが、2010年5月の日米安全保障協議委員会共同声明で、普天間飛行場の移設先として明文化されたのです。

これを受け、NACS-Jは、「しかたに自然案内」や北限のジュゴンを見守る会「チーム・ザン」と共同で、調査経験がある市民ボランティアのべ39名とともに、7月24日と25日に緊急調査を実施しました。今回の調査では、ジュゴンの食み跡調査のほか、葉上性貝類と底生生物の生息調査を行い、次のことが分かりました。

  1. 今回の調査と02年からの調査結果を比較したところ、辺野古の海草藻場では、7種類の海草の分布状況が年によって少しずつ変わるのですが、おおむね安定していることが分かりました。これは多くの生きものたちの生育場所となる海草藻場が、良好な状態であることを示しています。
  2. 今回初めて海草の上にすむ葉上性貝類の数を調べてみました。その結果、海草藻場は葉上性生物にとっても大事な生息場所であることが分かりました。鮮やかな黄緑色をした希少種の巻き貝のクサイロカノコやウネウキツボのように、国内ではまだ報告例が少なく生態が明らかになっていない種にも、海草は生息場所を提供しています。
    多種の海草の上に生息する種や特定の海草を好むと考えられる種などが確かめられ、多様な海草の存在が多種の葉上性貝類の生息を可能にしていると考えられます。
  3. ジュゴンの食み跡や糞を、過去に確認されていたところを中心に探してみたのですが、今回はジュゴンが辺野古海域を利用している証拠を確認するには至りませんでした。ただし、この海域の海草藻場は488.3haと広大です。このうちこの2日間で食み跡の調査ができた範囲は約33.5haで、全体のたった6.86%です。
  4. 今回初めて底生生物調査を行いました。その結果5地点で少なくとも362種以上の生物が確認され、海草藻場には海草藻場にしかいない生物種が見られ、岸からサンゴ礁に向かって生物相が変化していく様子が確認されました。合計の種数よりも岸から沖に向かって環境や生物が多種多様な組み合わせを示していたことが重要です。
  5. 2010年8月に発表された日米専門家検討会合の報告では、埋め立てが工法として適切であり、従来のV字滑走路案に加え、日本政府によるⅠ字滑走路案が提案されています。一連の調査結果とⅠ字案、V字案を重ね合わせると、どちらの案でも良好な海草藻場が埋め立てによって消失することに何ら変わりないことが分かります(下図参照)。

滑走路がV字でもI字でも、貴重な海草の群落とその生態系が失われることに変わりはなく、生物の多様性が豊かな辺野古の海を壊すべきではありません。COP10の目標10には「気候変動又は海洋酸性化により影響を受けるサンゴ礁その他の脆弱な生態系について、その生態系を悪化させる複合的な圧力を最小化し、その健全性と機能を維持する」とありますが、議長国日本としてもっと真摯な姿勢で足元の豊かな自然の保護について考えるべきです。

(安部真理子/保護プロジェクト部)

★レポートの詳細を、NACS‐Jのウェブサイトで公開しています。
辺野古緊急合同調査レポート(速報)~生物多様性豊かな辺野古の海~

葉上性貝類.jpg
▲葉上性貝類は主に葉上に生える藻類を食べている。

辺野古の海域の断面模式図.jpg

辺野古緊急調査で確認された貝類.jpg
▲今回の調査で確認された葉上性貝類の一部。
左上・キンランカノコ、右上・イワカワチグサ、下・ウネウキツボ。(写真:しかたに自然案内)

辺野古の海藻藻場_緊急調査.jpg
▲2010年の辺野古海域の海草藻場における海草類にどの程度覆われているか示したもの(%)。
※☆は調査地点の方形枠の外で海草が確認された地点。
右上・青色部分がV字滑走路案、赤色部分がI字滑走路案で埋め立てられる範囲。
(写真:国土地理院)

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