COP10 21日 保護地域の論点
COP10の四日目です。
8時30分からの日本のNGO会合から始まり、海外NGOとの戦略会議(9−10時)、作業部会やコンタクトグループ、IUCNの活動支援などめまぐるしい日々です。
第2作業部会は比較的順調(?)に議論が進んでいますが、第1作業部会はなかなか議論が進まずにいるようです。作業部会と同時にコンタクトグループは、「新戦略計画」「資金メカニズム」「海洋沿岸」「気候変動」「バイオ燃料」、フレンズオブチェアは「持続可能な利用(SATOYAMAイニシアティブ)」、予算委員会に、ABSの非公式協議と全部で10の会議が乱立しています。
よくある話ととらえる人もいれば、「消耗戦」にはいったととらえる人もいるようです。特に発展途上国の政府団は大人数でくることはできないので、会議が複数動き出すと対応できなくなってしまう懸念があります。
新戦略計画のコンタクトグループもいつの間にかSBSTTAの合意文書も再検討が始まり、土日をつぶす覚悟になってきました。この日の夜の最後の議題は目標11の保護地域だったのですが、2時間以上かけて議論し、終わったのは11時です(結局ブラケットだらけの文書を作るにとどまるのですが、、、)。
保護地域に関しては、主要な論点は、
目標11が保護地域を増やすだけなのか、それ以外の手法で保全されている場所も含むのか(それ以外の手法とは何か)、そもそも保護地域とはなんなのか(IUCNの定義と、CBDの定義に差異がある)。それ以外の手法とは何なのか。どういう数値目標を採択できるのか。などなどさまざま論点で意見を出し合います。
こういう段になるとIUCNの発言が結構効いてきます。現状の保護地域カバー率、過去からの推移、どのような情報が手に入るのか、保護地域管理をはかることができるのかなど、会議で出てきた質問に次々と答えていきます。
結局出来上がった文書は以下のようになりました
Target 11: By 2020, at least [15%][20%] of terrestrial, inland- water and [6%][10%][15%] of [territorial waters] marine areas, especially areas of particular importance for biodiversity and ecosystem services, are conserved through comprehensive, ecologically representative and well-connected systems of effectively [and equitably] managed protected areas [,including all governance levels] [and other effective in situ conservation means], and integrated into the wider land- and seascape.]
論点1 陸域[15%][20%]
EUや多くの国が20%を支持。現状13%近くを保護していることなどからかなりのマジョリティーが20%のように思います。中国がこの目標は「効果的に管理された保護区を作る」ということなので15%がよいと提案しました。
論点2 海洋[6%][10%][15%]
2010年目標採択後に定められた下位目標で各生態系を10%保護区にするという目標があり、多くの国が2010年目標から下げることを拒否しました(ここでも中国が6%という数字を提示。根拠はよくわかりません)。パラオなどの小島嶼国やブラジルなどは、海洋については積極的な数字をと主張し15%を(現状のカバー率は1%)、アフリカなどは10%が現実的と主張。
論点3 [territorial waters] marine areas
淡水域と海洋をあわせると6%近くのカバーになるそうなのですが、淡水域の何%が保護されているというデータがなく、データの入手可能性から、こういう言葉ができています
論点4 [and equitably]
この言葉はIIFBが差し込みました。単純に保護地域面積を増やすのではなく、その際に、先住民族の参加を確保するという趣旨で入れたものです。SBSTTAでも話題になっていたのですが、どこかの国がequitably managementが何を意味するかわからないと削除してしまったのですが、再度議論の俎上に載せることができました。
論点5 [,including all governance levels] [and other effective in situ conservation means],
現在、先住民共同体保全地域(ICCA:Indigenous Community Conserved Area)が話題になっているのですが、砕いていうと持続的な資源利用によって守られているところをもっと注目しようという動きです。カナダが「other meansとはいったい何なのか教えてほしい」とかなり気にしている様子でした。ICCAでも構わず、明示的にother meansを書き込むことを提示しています。
(道家哲平/保全研究部)