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COP10 28日までの経過あらましと新戦略目標の採択状況 その1

2010.10.29
活動報告

とうとうCOP10最終日の一日前になりました。が、最終日前日も日をまたいで会議が継続しています。 これまでから、10月28日23時現在の状況を報告します。

第1週目、作業部会1(森林や気候変動、保護地域などテーマ別課題)と作業部会2(横断的、条約全体の課題(資金動員戦略や新戦略計画))という性格分けで議論が進みました。同時並行で計340近いサイドイベントや、フォーラムイベント(数不明)、記者会見、NGOによるアピール行動、生物多様性交流フェアが行われました。

前半は作業部会2の方が順調に議論をこなし、作業部会1の方がやや遅れを見せているような(対立点が多いこともあり)感がありました。ただ、1日、2日と日にちが過ぎるたびにコンタクトグループや議長の友会合(フレンズ会合)が乱立。

コンタクトグループは記憶している限り、「新戦略計画」「資金メカニズム」「気候変動」「海洋沿岸」「バイオ燃料」「森林」「8条(j):伝統的知識」、フレンズオブチェアの会合は「持続可能な利用」「ジオエンジニアリング」にもう2、3あったように思います。

同時並行で、予算委員会とABSの非公式協議がずっと続きます。本来は、午前(10時−13時)、午後(15時−18時)と作業部会があるのですが、26日くらいから夜(19時から21時)も作業部会を開くようになりました。二週目にはいると早い段階でまとまったCRP文書を早すぎるという意見があるくらいさっさと議論してL文書化し、大きな課題に焦点を絞り始めた感がありました。

ABS交渉、戦略計画や資金メカニズムのコンタクトグループなどは、終電ぎりぎりまで、海洋は日をまたいで朝の4時まで議論することもあったくらいです。

さて、戻って28日深夜の状況ですが、第1作業部会は全部L文書化が終わり、作業部会の議題「新戦略計画」「資金メカニズム」「条約の多年度計画(MYPOW)」がL文書化できずに、通訳サービスが切れたあとも継続しました。

 

ここからは、28日深夜までにCOP10で採択された新戦略計画の個別目標の解説をしようと思います。(ただし、これは個人的かつ暫定見解で、もう少し丁寧に議事録を追った方がよいかもしれません。)いくつかの記事に分けてまとめます。文中のWGRIは5月にケニア・ナイロビで行われた事前の国際会合(Working Group on Review and Implementation)で条約の実施とレビューに関する作業部会と呼ばれています。それでは、その1はまず目標1から4まで。

 

★目標1

当初案(事務局原案)English

Target 1: By 2020, everyone is aware of the value of biodiversity and the steps they can take to protect it. 

当初案(事務局原案):日本語

2020年までに、すべての人々が生物多様性の価値とそれを守るためにとれる手段を理解する。

 

WGRI修正案:English

By 2020, at the latest, all people are aware of the values of biodiversity and the steps they can take to conserve and use it sustainably.

WGRI修正案:日本語

遅くとも2020年までに、生物多様性の価値と、それを保全し持続可能に利用するために可能な行動を、全ての人々が認識する。

 

COP10 English

By 2020, at the latest, people are aware of the values of biodiversity and the steps they can take to conserve and use it sustainably.

COP10:日本語

遅くとも2020年までに、生物多様性の価値とそれを保全し持続可能に利用するために可能な行動を、人々が認識する。(道家仮訳)

 

ポイント 保護に加え、持続可能な利用が追加されるも、「あらゆる人々」という表記が弱まる。


目標2

当初案(事務局原案)English

By 2020, the values of biodiversity are integrated by all countries in their national accounts, national and local strategies and planning processes, and by business, applying the ecosystem approach.

当初案(事務局原案):日本語

2020年までに、生態系アプローチを適用し、生物多様性の価値がすべての国で、国民経済計算、国家・地方戦略や計画過程、事業活動に組み込まれる。  

 

WGRI修正案: English

By 2020, at the latest, the values of biodiversity are integrated into [national accounts], national and local development and poverty reduction strategies and planning processes.

WGRI修正案:日本語

遅くとも2020年までに、生物多様性の価値が、[国家勘定、]国と地方の開発・貧困解消のための戦略及び計画プロセスに統合される。

 

COP10 English 

By 2020, at the latest, biodiversity values have been integrated into national and local development and poverty reduction strategies and planning processes and are being incorporated into national accounting, as appropriate, and reporting systems.  

COP10:日本語 

遅くとも2020年までに、生物多様性の価値が、国と地方の開発・貧困解消戦略およびその立案プロセスに統合され、ふさわしい場合は国家勘定と報告制度に組込まれる。(道家仮訳)

 

ポイント:WGRIの段階で、この目標を国・地方自治体に絞り込み、企業に関係する部分を個別目標4に組込むことが合意された。焦点は「国家勘定」をいれるかどうか。統合integrateと組込むincorporateでやや表現の強さに差ができた。


目標3

当初案(事務局原案)English

By 2020, subsidies harmful to biodiversity are eliminated, and positive incentives for the conservation and sustainable use of biodiversity are developed and applied.

当初案(事務局原案):日本語

2020年までに、生物多様性に対して有害な助成金が排除され、生物多様性の保全や持続可能な利用に有益なインセンティブが開発され適用される。

 

WGRI修正案: English

By 2020, at the latest, incentives[, including subsidies,] harmful to biodiversity are eliminated, phased out or reformed in order to minimize or avoid negative impacts [and positive incentives for the conservation and sustainable use of biodiversity are developed and applied, [consistent with relevant international obligations]] , taking into account national socio-economic conditions.

WGRI修正案:日本語

遅くとも2020年までに、生物多様性に有害な[補助金を含む]奨励措置が廃止され、段階的に廃止され、又は負の影響を最小化又は回避するために改革され[、また、[関連する国際的な義務に整合する形で]生物多様性の保全及び持続可能な利用のための正の奨励措置が策定され、適用される]


COP10 English 

By 2020, at the latest, incentives, including subsidies, harmful to biodiversity are eliminated, phased out or reformed in order to minimize or avoid negative impacts, and positive incentives for the conservation and sustainable use of biodiversity are developed and applied, consistent with article 22 of CBD and in harmony with the Convention and other relevant international obligations], taking into account national socio-economic conditions.

COP10:日本語
遅くとも2020年までに、生物多様性に有害な奨励措置(補助金を含む)が廃止され、段階的に廃止され、又は負の影響を最小化又は回避するために改革され、また、国の社会経済的な状況を考慮しながら、条約22条および条約と調和し、他の関連する国際的な義務に整合する形で、生物多様性の保全および持続可能な利用のための正の奨励措置が策定され、適用される。(道家仮訳)


目標4

当初案(事務局原案)English

By 2020, Governments and stakeholders at all levels have formulated, and have begun to implement, sustainability plans to keep the use of resources within ecological limits.

当初案(事務局原案):日本語

2020年までに、すべてのレベルの政府やステークホルダー(利害関係者)が、生態的許容範囲内で資源の利用を続けるための持続可能性に関する計画を策定し、実施を開始する。

 

WGRI修正案: English

By 2020, at the latest, Governments, business and stakeholders at all levels have taken steps to achieve or have implemented plans for sustainable production and consumption and have kept the impacts of use of natural resources well within safe ecological limits.

WGRI修正案:日本語

遅くとも2020年までに、政府、ビジネス及びあらゆるレベルの関係者が、持続可能な生産及び消費のための計画を達成するための行動を行い、又はそのための計画を実施しており、また自然資源の利用の影響を生態学的限界の十分安全な範囲内に抑える。

 

COP10 English

By 2020, at the latest, Governments, business and stakeholders at all levels have taken steps to achieve or have implemented plans for sustainable production and consumption and have kept the impacts of use of natural resources well within safe ecological limits.

COP10:日本語
遅くとも2020年までに、政府、ビジネス及びあらゆるレベルの関係者が、持続可能な生産及び消費のための計画を達成するための行動を行い、又はそのための計画を実施しており、また自然資源の利用の影響を生態学的限界の十分安全な範囲内に抑える。(WGRI案と変更無し)

 

ポイント:事務局による第1素案、目標2の企業に関する言及が、この個別目標に移された。2020年までに開始するという表現から、遅くとも2020年までに「実施している」という達成目標が高まっている。また、生産に加え、消費も文言に入っておりより目標の幅が広がっている。

(道家哲平/保全研究部)

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