AKAYAプロジェクトエリアに 体系的な自然林復元試験地を設定します。
会報『自然保護』No.517(2010年9・10月号)より転載
AKAYAプロジェクトは、生物多様性復元のため、生物多様性の低いスギやカラマツだけの人工林から、本来あるべき自然林、ブナやミズナラ、クリなどが優占する豊かな林へと誘導することを目指しています。しかし、人工林から自然林への復元方法は確立されていません。自然林復元を困難にしている最大の原因は、復元する技術がないことと、その技術をつくるための実験成果を得るには数十年程度の時間がかかってしまうことです。
長期の研究の成果から、東北地方のブナ林を伐採後、約30年経過した林は、ブナ林ではなくウワミズザクラやホオノキなどの先駆性樹種の林になる例が報告されています。そのため、人工林だった場所をブナ林などの本来あるべき自然林に復元するのは相当難しく、時間がかかると予想されます。
そこで、数十年先を見据えて、人工林を自然林へ復元する技術を確立するため、既にある試験地に加え、大規模な試験地を複数の環境に設定し、来年から実験を開始します。ここで得られた技術は、赤谷で自然林を復元することが決まった数千haの人工林に活かすだけでなく、日本全国の自然林復元を行う地域にも提供していきます。
(藤田 卓/保護プロジェクト部)
▲来年度伐採予定のスギ人工林試験地。(群馬県みなかみ町)
赤枠部分を伐採し、種子供給源となる自然林から人工林内のどこまで種子が散布され定着できるのか、伐採幅を拡げると自然林への復元スピードが速まるかを検証する。