長良川河口堰についての研究報告書を発行しました。
会報『自然保護』No.516(2010年7・8月号)より転載
長良川河口堰(三重県)が運用を始め、15年以上が過ぎました。NACS-Jは1990年に川の研究者を集め、河川問題特別委員会・長良川河口堰問題専門委員会を組織し、河口堰が運用された場合の環境変化についての予測を発表しました。
河口堰が完成した後も、環境変化のモニタリングを支援し、影響を軽減するための運用方法について提案を続けてきました。このたび、長良川で何が起こったのかを検証するため、報告書『長良川河口堰運用10年後の環境変化とそれが地域社会に及ぼした影響の解析』を発行しました。
事業者、住民、研究者が見続けた河口域の自然の変化をまとめてみると、1990年の予測がほぼ正しかったことが裏付けられました。プランクトンの発生は常習化し、魚類の種類組成は変わり、ヨシ帯の面積は大幅に縮小しました。自然だけではなく、川に依存する地域の生活も影響を受けた可能性があります。
しかし、川の変化を物語る資料はまだ十分ではなく、今回の報告書の内容と河口堰をつくった国土交通省・水資源機構の影響評価とは隔たりがあります。長良川河口堰の問題はまだ終わったわけではありません。
報告書は自然保護助成基金の助成を受け、愛知・岐阜の研究者による「長良川河口堰事業モニタリング調査グループ」の協同作業で発刊されました。報告書の内容についての詳しい情報が必要であれば研究グループの窓口・村上まで連絡ください。
■報告書の内容についての問い合わせ
〒467-8610名古屋市瑞穂区汐路町3-40名古屋女子大学 村上哲生