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生物多様性の損失を止める 環境影響評価法(アセス法)の改正になるか。

2010.03.01
活動報告

生物多様性の損失の約8割は「生息地の破壊」と言われています。環境影響評価(以下、アセス)を行った結果、事業の中止や大幅修正となった例はとても限定的です。開発事業者は事業内容は揺るぎないことを前提に、調査、予測、評価を手続き的に行うことが多くあります。そのため、どんなに自然が豊かな環境でも開発され、移植など不確実性の高い環境保全措置がされる……これでは、生物多様性の損失は止まりません。

昨年8月より、環境省中央環境審議会のもとに設置された「環境影響評価制度専門委員会」(委員長・浅野直人福岡大学教授)において、アセス法の改正議論が続けられてきました。

12月に、事業者団体やNGOからの要望で急遽、ヒアリングが行われました。COP10を間近に控え、マイナーチャンジでは済まされないと、NACS-Jは「生物多様性の保全に向けた制度改正を」と題して、改善点を主張しました。 2月末にまとめられた中央環境審議会の最終報告書をもとに、NACS-Jがこれまで提言してきた内容について左記に解説します。政府はこの最終報告書をもとにアセス法改正案を作成します。現在開かれている通常国会で改正案が審議されるので、皆さんも注目してください。

(大野正人/保護プロジェクト部)


環境影響評価制度専門委員会の報告書の内容

○ NACS-Jの提言で盛り込まれたもの

戦略的環境アセスメント(SEA)を含めた法制度にする
これまで消極的であったSEAの制度化が、専門委員会報告に盛り込まれたことは画期的。経済界を代表した委員は、民間事業を法アセスの対象外とするよう主張したが、生物多様性基本法にも謳われていることから、公共・民間の区別をつけないことになった。しかし、今後の制度設計の中で、民間事業だけ特例的に扱われないよう注意が必要。

SEAが導入されると、事業の位置や規模の検討段階で複数案を環境の面から比較検討し、公表して住民や自治体などから意見を募った後、計画進行の意志決定を行い、これまでの事業アセスに進むという流れになりそうだ。

事業詳細が決まる前だからこそ、住民意見を反映させ、地域の生物多様性の損失を回避することが可能になるようにしたい。本来のSEAは計画の政策・構想・立案段階からのアセスをいうが、そのしくみは別途必要だ。

×NACS-Jの提言で盛り込まれなかったもの

■国土の生物多様性保全の観点から、対象事業を判定できていない
環境アセスの対象を事業種や規模で決めている限りは、事業を細切れにするなどして、アセス逃れができてしまう。また、生物多様性の豊かな環境では、規模の大小にかかわらず致命的な影響を被ることになる。大規模な風力発電事業が自主アセスでは不十分なことから法アセスの対象となることにはなったが、「生物多様性の観点からアセスの実施を決める……」という提言はこの報告書では取り入れられなかった。土地利用と照合できる生物多様性情報や評価図の蓄積がますます必要である。

■国のアセス審査会の設置
現在、環境大臣はアセスの終盤の評価書に意見をつけることしかできない。その段階では遅すぎるため、方法書段階から全国的視野にたった意見をつけられることが盛り込まれている。NACS-Jは環境大臣意見のバックグランドとして、科学的な議論をもとに事業者に対峙するため、有識者による常設のアセス審査会が必要であると主張してきた。しかし、報告書には、県にある条例をもとにした審査会と重複するという理由で入らなかった。国レベルの視点で科学的見地から指摘を行うことは重要で、海外では相応した機関が設置されている(下表)。
海外におけるアセス結果の審査体制.jpg

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