「今後の環境影響評価制度の在り方について」に関するヒアリングで、アセス法改正への提言を行いました。
2010年環境影響評価法改正で改善すべきポイント NACS-Jからの提言(PDF形式 159KB)
2010年環境影響評価法改正で改善すべきポイント
NACS-Jからの提言
2009年12月11日
日本自然保護協会 大野正人
(保護プロジェクト部部長代行)
環境影響評価法は、生物多様性条約における「ポスト2010年目標」を見据え、生物多様性の損失の最大要因である「開発等による生息地の消失」を事前に回避し、生物多様性の保全を強く推しすすめる制度への転換が求められます。しかし残念ながら、専門委員会中間報告からは生物多様性保全にむけた戦略的意欲的な改善案を読み取ることができず、現状では「政策的方向性のないマイナー改正」と言わざるをえません。
NACS-Jは、次の3つの重要な内容を提言し、今後改善にむけた議論を期待いたします。
添付資料:2010年環境影響評価法改正で改善すべきポイント ~今後のアセス制度のあり方~(172KB)
■改善のポイント
1.戦略的環境アセスメント(SEA)を含めた法制度とする
第一条目的「事業実施にあたり」を残したままでは、事業の遂行が前提となり、適正な環境保全への配慮はありえない。回避や事業見直しを望む市民からの指摘とは乖離するばかりである。この一文を削除すれば、立地や位置規模の検討段階などからアセス手続きに入り、SEAが可能となる。環境基本計画、生物多様性国家戦略、生物多様性基本法でもその推進が謳われているにも関わらず、SEAガイドラインによる実績を待つのでは時間だけが無駄に過ぎる。環境問題が複雑化する時代に、事業確定前のSEAによる影響評価への市民の関与こそ、社会合意をまとめる道筋になる。
2.国土の生物多様性保全の観点からも、対象事業を判定する
法の対象事業を規模や事業種、事業主体だけで決めている限りは、「アセス逃れ」や「重要地域での致命的な影響」は免れられなく、また、減少する大規模公共事業に変わる新たな民間事業の環境破壊が懸念される。それらを条例アセスに委ねるだけではあまりにも不十分である。国土的視野から生物多様性の保全が優先される地域(国立公園~重要湿地等)や絶滅危惧種(環境省レッドリストⅠ類等)の生息地における事業に関しては対象とし、環境省が監視・関与できるようにすべきである。
3.事後調査のチェックと事業への反映を厳格にする
事後調査の推奨で予測評価を検証し事業者の責任を重くしなければ、安易な影響評価が準備書に記載され、事後調査実施のうえ専門家会議が設置されてもチェック不全という状況は改善されない。具体的な保全措置もふくめた事後調査計画を評価書に盛り込み、事後調査報告書の公表と意見徴集、事業改善が必要な場合の大臣勧告や罰則なども設けるべきである。
以上