緊急に対策が必要な問題は何かを見定め、効果的な保全管理の具体策を進めています。
2007年11/12月号より転載
今年4月、林野庁は小笠原諸島にしか存在しない重要な生態系を守るため、国有林の99%以上を「小笠原諸島森林生態系保護地域」として設定しました。この保全管理を計画的かつ積極的に行っていくための、地元委員が中心となった保全管理委員会が始まっています。第2回の委員会は8月22日に開催され、NACS-Jと林野庁、アドバイザー委員とで協議しながら進めてきた、保全管理計画(素案)と利用のルールを話し合う専門部会の設置(案)が了承されました。
小笠原では、これまでに外来種の除去などさまざまな施策が行われてきましたが、残念ながら十分な効果が出ているとはいえません。状況を打開するために、この素案では、
- 保全管理の原則がその土地の生態系をとらえたものであること、
- 緊急性の高い場所を先行して、保全計画を立て効率的に施策を実施していくこと、
- これまで至る所自由につくられてきた踏み分け道を整理し、生態系への影響を第一に考えた歩道を定めていくこと
の3つの柱をあげています。緊急に対策が必要とされる母島のオガサワラシジミ、父島東部のアカガシラカラスバト、兄島の乾性低木林の保全についての実行計画と、踏み分け道の整理は今年度中に取り決められる予定です。
NACS-Jは、この原則が決して揺らぐことのないよう、関係機関に働きかけ続け、地元の関係者の方々と協働しながら、小笠原の自然環境の効果的な保全を実現していきたいと考えています。
(辻村千尋 保護プロジェクト部)