2009年9・10月号(No.511)
特集:保護地域で生物多様性を守る10の課題
今月の表紙 エゾナキウサギ
氷河期の生き残りともいわれるエゾナキウサギに、北海道中央部、大雪山系の森で出合った。溶岩で敷き詰められた岩場をすみかとし、風穴と呼ばれるわずかなすき間から出入りを繰り返す。彼らは寒い冬でも冬眠はしないため、秋には草や葉などを口にくわえてすみかへと運び、冬に向けてたくさんの食べものを蓄える。
CONTENTS
★特集:
保護地域で生物多様性を守る10の課題
NACS-Jは、日本の生物多様性を守る方法のひとつとして、自然保護地域というしくみに注目し続けてきました。
保護地域の持つ規制によって、乱開発から守られた場所は数多くあります。しかし、保護地域に指定されても自然環境が劣化してしまう場所もあります。
今号は、生物多様性を守っていくために、今、保護地域が抱えている問題は何か、改善のためには何が必要かを考えていきます。
・日本の自然保護地域の実力アップを目指そう
・課題
① 希少種の繁殖地保全よりレジャー利用が優先されている。
② 管理に責任を持つべき担当行政に生態系保全の施策が不足している。
③ 守られるべき自然の景観が破壊されている。
④ 対策を重ねても外来種の侵入が止まらない。
⑤ 保護地域の規制が生態系保全の足かせになっている。
⑥ 段階的な区分を築き、人の利用を合わせるという原則が忘れられている。
⑦ 生態系の変化や、生態系への脅威に対応する計画がつくられていない。
⑧ 日本全土の保護地域を統合的に見る取り組み・システムがない。
⑨ 保護地域設定に偏りがある。
⑩ 海の保護地域づくりが遅れている。
・日本の保護地域と世界の保護地域の違い
・生物多様性の劣化を防ぐ保護地域づくりのためのアクション
・まとめ/生きものの視点からみた自然保護地域づくり
★NACS-J活動クローズアップ
・里やまモニタリング結果から自然の変化が明らかになりつつあります
・3年間の調査で分かってきたヤクシカの実態
・生態系区分でみえてきた小笠原の自然
生物多様性条約シリーズ「保護地域編」発行/COP10、1年前イベント開催~IUCN-J事務局~/「赤谷の森」を体感する会員ツアー開催/第9回沼田眞賞受賞者決定・記念講演会を開催
★NEWSハイライト
・地元を無視した熊本・荒瀬ダム撤去の方向転換
・高速道路値下げでCO2排出増加。クールビズ2年分の効果が消える
・大阪府の団地に高リスクの外来カタツムリが侵入
・サンゴの白化は褐虫藻が逃げ出すのではなかった!
★今日からはじめる自然観察
スケッチで観察力をレベルアップ !
(小野木三郎/NACS-J自然観察指導員)
時間がないや・・・・・・、絵が苦手・・・・・・、とついつい敬遠してしまいがちなスケッチ。でも、見たまま描けばいいのです。すると、必然的にモデルをよく見なければならないので、ただ見るよりも自然と観察力がついてきます。
★くらしと自然のつながり再発見!
①熊本県 球磨川・川辺川の尺鮎
太か鮎はきれいか川が育つっと。
取材・文/保屋野初子
イラスト/さげさかのりこ
★シリーズ 新・生命の輪・21
森林に負けない種数の植物が生育
特有の生態系を持つ森の中の断崖
(鹿野雄一/NPO法人流域環境保全ネットワーク 副理事)
森の中で垂直に切り立ち、岩肌が露出した崖。一見、単調で、生きものにとって過酷な環境に思えるこの場所にも、さまざまな生きものが、自分の好みの場所を見つけて暮らしていました。
★自然を守るあの手この手
新自然観察指導員を観察会リーダーに育てる
(池原宏二/NACS-J自然観察指導員)
★OPINION
生物多様性の基本単位である地域個体群の保全を企業に求む!
(瀬能 宏/神奈川県立生命の星・地球博物館 専門研究員)
★生物多様性の道プロジェクト
「市民調査の発表会」のためのアンケートにご協力ください!
★BOOK&PRESENT
★読者の広場
掲示板/お便り/フォトライブラリー/次号予告・新人会員/NatureNavi
日本自然保護協会オンラインSHOP「しぜんもん」よりお買い求めいただけます。価格900円(送料別)