絞り込み検索

nacsj

諫早湾干拓 開門調査の 環境アセス方法書骨子(素案)に意見提出

2009.05.29
要望・声明

2009年5月14日

諫早湾干拓事業開門調査のための
環境アセスメントに係る方法書骨子(素案)への意見

(財)日本自然保護協会

(財)日本自然保護協会は、諫早湾干拓事業による自然環境への影響について、現地調査活動(2001、2002年)を行い、大規模な貧酸素水塊の発生により有明海の漁業や内湾生態系に重大な影響が生じていることを明らかにし、干拓事業の見直しと自然環境の回復の必要性を度々指摘してきた。

昨年6月27日の佐賀地方裁判所判決、及び7月10日の農林水産大臣談話を受け、この開門調査のための環境アセスメントが実施されている。今般、開門調査のための環境アセスメントに係る方法書骨子(素案)が示されたが、有明海の自然環境及びその自然資源を糧に漁業等を営む地域住民の現状を踏まえ、その手続き及び方法に問題点を抱えていると判断されることから、ここに意見を提出するものである。


1.開門調査のための環境アセスメントの位置づけについて
開門調査にあたって、環境アセスメントが実施されることは、科学的知見に基づく当該事業の影響予測に基づき、その回避・低減の方策を検討するという環境影響評価法の精神に則っていると評価できる。
ところが、本環境アセスメントの前提となる開門方法について、今般公開された方法書骨子(素案)以前に、示されたものがない。そもそも、本環境アセスメントは「開門調査のための環境アセスメント」であるから、「開門調査」の実施計画に基づいた環境影響の予測のための手続きである。しかし、現段階で九州農政局による開門調査計画は示されていない。開門調査計画が示されないままに、環境アセスメントの方法書を作成しても、その内容は多くの環境要因を網羅的に把握するものとなってしまい、効果的・効率的な影響予測を行うとする環境影響評価法の精神からは外れるものとなってしまう。

九州農政局は、環境アセスメントの実施に先行して、全ての利害関係者からなる、開門調査計画の検討のための場を設定すべきである。

2.方法書骨子(素案)の位置づけと問題点について

昨年7月の農林水産大臣談話から10ヶ月が経過しているにもかかわらず、開門調査計画が示されず、方法書が骨子(素案)の段階にとどまっていることは、一刻も早い開門調査が求められている有明海の現状に鑑み、適切なスピードとは言えない。九州農政局が想定している環境アセスメントの手続きと、その後に実施するとされる関係者の同意手続き、準備工事を含めれば、3年以上の時間がかかることが予想される。この間、麻生太郎内閣総理大臣、石破茂農林水産大臣が国会において、環境アセスメントの迅速な実施の必要性について答弁しているにもかかわらず、全体として3年以上の時間がかかる計画となっていることは、明らかに妥当性を欠いている。

そもそも、諫早湾干拓事業においては、行政機関、研究機関、市民団体等様々な立場の主体による、環境モニタリング調査が実施され、データが蓄積されている。またこれらデータに基づく開門の是非は、長きにわたって訴訟の場や国会においても議論されている。データの一部は、訴訟の場において検証もされているものである。
九州農政局は、本環境アセスメントにあたって、それら既存データを十分に活用すべきである。本環境アセスメントにあたり膨大な調査をゼロから実施し直すことは、公的資金の有効な活用とは言えず、いたずらに時間をかけ、結果として有明海の再生を遅らせることに他ならない。

以上

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する