AKAYAプロジェクト5年間の取り組み 赤谷型協働管理のしくみを全国へ波及させたい。
会報『自然保護』No.508(2009年3/4月号)より転載
さまざまな立場のグループの協働モデルをつくる
このプロジェクトは、関東森林管理局、地域協議会、NACS-Jを中核団体として、これまでなかった協働の枠組みで国有林の管理を行っています。協働のポイントは、それぞれが抱える課題や希望を会議の場へ持ち寄り、それらをできるだけ重ね、プロジェクトの共通課題として優先順位をつけ整理することです。このような調整を行うファシリテーション機能を、NACS-Jはより強化していきたいと考えています。
森と渓流の生物多様性の保全・修復モデルをつくる
科学的根拠に基づく生物多様性の保全や修復を進めるために、多分野の専門家からなる「モニタリング会議」と、テーマ別の検討チームを編成しています。植生管理ワーキンググループ(以下WG)は、目標となる自然林の調査と、人工林を自然林に誘導するための伐採に取り組んでいます。猛禽類WGは、森の健全さを示すイヌワシ・クマタカの分布と、それぞれが獲物を得る狩場と子育てをする営巣環境に関する情報を重点的に集め、ほ乳類WGは森のほ乳類相とホンドテン・ニホンザルを対象とした食性・行動調査を行っています。これにより、本来の自然性にふさわしい森林植生を取り戻すための指標開発を進めています。また、治山事業を活用して、治山ダムの撤去を通じた渓流環境修復にも取り組みます。
▲2006年に実施したカラマツ人工林の伐採実験。植栽をしなくても、伐採後1年で1haあたり5000本以上の自然林の幼樹が出現した。
成果を国有林の管理計画へ
赤谷の森の国有林の管理計画が、2011年3月に改訂されます(5年に1度)。この計画で、森林をどう管理するかを定めます。プロジェクトではこの機会に、生物多様性保全にプラスの効果を生む人工林の伐採方法を管理計画に組み込むため、09年度から準備に取りかかります。多岐にわたる調査はこの計画策定と実行のために行ってきたものです。
林野庁は、昨年12月、国土面積の約2割にあたる国有林野全域の「管理経営基本計画」を5年ぶりに改訂しました。新しい計画には、基本方針のひとつに「生物多様性の保全」が盛り込まれましたが、赤谷の森で定められる管理計画はその具体的な進め方を明確に示した、今後のモデルとなる計画にしたいと考えます。
NACS-Jは今後、AKAYAプロジェクト型の取り組みの方法論を全国各地の生物多様性保全のフィールドへ広げていきます。AKAYAプロジェクトの活動は、NACS-J会員・自然観察指導員を中心とするサポーターの方々、企業の社会貢献活動に基づく支援をいただき、市民・社会に開かれた形で進めています。プロジェクトの輪を広げるために、ご協力ください。
★AKAYAサポーター大募集!!
プロジェクト活動に参加するサポーターを随時募集しています。野生生物のモニタリング調査や、フィールド管理・教育活用のための自然誌蓄積、炭焼きなど自然利用を行っています。メニューに応じて、必要な研修を受けていただいたり、専門家や地元の方々に学びつつ、活動します。
毎月定例の「赤谷の日」(第1土日)の機会に研修を積み重ねながら行っていますので、フィールドワークを学んでいきたい方も大歓迎です。
問い合わせ AKAYAプロジェクト総合事務局
■赤谷での企業のCSR活動リスト
・株式会社ニコン
リアルネイチャーキャンプの協賛(2003年~2006年)
自社製品(望遠鏡・双眼鏡・カメラ・顕微鏡など)の提供による調査研究活動支援(2005年~現在まで)
・株式会社千趣会
総合事務局活動やワーキンググループ活動の支援 (2006年~現在まで)
・アクセンチュア株式会社
旧三国街道フットパス網計画の活動費助成 (2007年~2008年)
・富士ゼロックスシステムサービス株式会社
パンフレット、ウェブサイト制作の一部支援 (2004年~2006年)
・宝酒造株式会社、共同印刷株式会社、株式会社モンベル
リアルネイチャーキャンプの協賛(2004年~2006年)