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自然公園のあり方検討小委員会に対し6つの提言を行いました。

2009.01.01
活動報告

自然公園法の改正を視野に入れ、環境省は自然公園(国立公園・国定公園・都道府県立自然公園)のあり方検討小委員会(座長:熊谷洋一東京農業大学教授)を開催しています。
NACS-Jは今の自然公園制度の根本的な問題点について議論し、自然公園のあり方検討小委員会に対し6つの提言を行いました。

会報『自然保護』 2009年1/2月号より転載

宮崎県綾町の国立公園の画像

宮崎県綾町の照葉樹林。現在、国定公園に指定されているが、生物多様性の豊かな森であり、国立公園への格上げが求められる。このように生物多様性の価値と公園の指定との間にはギャップのある場所が多い。


自然公園のあり方について検討が進行中

この会議で環境省が大きな論点としていることは、次の3点です。

(1)海域保全の充実、(2)生態系保全管理の充実、(3)国立公園事業の管理運営の充実

(1)の海域保全は、自然公園に指定されず、保護されていない藻場が53%、造礁サンゴが57%、干潟が92%となっている現状から、早急に海域保全の充実が必要であるとしています。
(2)の生態系保全管理については、近年問題視されるようになった高山帯へのシカの食害拡大への対処が大きな課題となっています。
(3)の国立公園事業の管理運営については、国立公園の現場に即した、質の高い管理運営を可能とする制度の導入を課題としています。

生物多様性を自然公園法の目的に

NACS-Jでは、これまでの議論を踏まえ、今の自然公園制度の根本的な問題点について、専門家を交えて議論をしました。現行の自然公園法では、国および都道府県の責務として生物多様性の確保が義務化されたものの、法の目的はあくまで、見た目の優れた自然の風景地の保護です。第3次生物多様性国家戦略では、国立公園を「日本の生物多様性保全の屋台骨」と位置づけています。これを公園管理の主軸として現実化させるためには、自然公園法の目的条項に生物多様性保全を位置づけることが重要であることを、議論の中で確認しました。

また、自然公園は指定をして終わりではなく、科学的に妥当性のある保全管理を各公園ごとに行っていくことが必要です。まずは自然の現状を把握するための科学的調査を早急に実施し、その後も継続的にモニタリング調査を行って、その結果を見ながら対応策をとる順応的管理のしくみを整えていくことが重要であることも確認しました。NACS-Jでは、こうした議論を踏まえ、自然公園のあり方検討小委員会に対して、下記の6つの提言を行いました。

なお、検討小委員会の答申は、2009年1月にパブリックコメントを求める予定とのことです。皆さんもぜひ、提言を行って、より良い公園制度になるよう、ご協力ください。

(辻村千尋 保護プロジェクト部)


自然公園のあり方に関するNACS-Jの6つの提言(全文・PDFファイル/19KB)
(1)「生物多様性の保全」を自然公園法の目的条項に位置づける。(2)自然公園を、気候変動を緩和し、気候変動への適応する場として位置づけ、範囲の拡大、予算の確保を行う。(3)国立公園における科学的な調査研究・自然環境情報収集・モニタリングの体制を確立する。(4)国立公園をタイプ別に分け、公園ごとの保全管理目標を設定する。(5)「公園計画」のあり方を見直し、住民、NGOを含めた「公園計画協議会」を設置する。(6)海域保護区の設定にあたっては、他省庁と連携し、生態学的に見て重要な流域を含める。

環境省ウェブサイト

パブリックコメント募集
http://www.env.go.jp/info/iken.html#627
自然公園のあり方検討小委員会
http://www.env.go.jp/council/12nature/yoshi12-02.html

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