『沖縄島北部東海岸における海草藻場モニタリング調査報告書』の発行にあわせコメントを発表。
2007年8月6日
生物多様性保全の見地から普天間飛行場代替施設建設事業の見直しを求めるコメント
(財)日本自然保護協会
保護プロジェクト部 部長代行 大野 正人
普天間飛行場代替施設建設事業の見直しを求めるために、(財)日本自然保護協会(理事長・田畑貞寿)は、2002年から、市民参加による海草藻場モニタリング調査「ジャングサウォッチ」を、沖縄島北部東海岸、辺野古・嘉陽で実施してきた。
また、2005年以降、『V字形滑走路案』によって新たに埋め立て予定地とされている大浦湾でも、現地調査を行ってきた。このたび、これまでの調査結果を取りまとめ、「沖縄島北部東海岸における海草藻場モニタリング調査報告書」を発行した。
これまでも言及してきたとおり、『辺野古沖案(SACO合意案)』、『辺野古沖縮小案』、『沿岸案』のどの案でも、また、『V字形滑走路案』の修正を行ったとしても、サンゴ礁上に計画していること自体が生物多様性及び自然環境保全上根本的な問題であるため、自然環境保全上の問題は解決されない。
また、今年4月から、環境アセスメント法の手続きを形骸化させる事前調査が行われている一方で、先日、環境省が発表(8月3日)した環境省版レッドリスト(「哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物I及び植物IIのレッドリストの見直しについて」)に、ジュゴンが初めて掲載、絶滅危惧IA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い)に分類された。
過去に、環境庁自然保護局長と水産庁長官の間で、「漁業対象の水産動植物等を種の保存法の保護対象種から除く」という趣旨の覚書が交わされていたこともあり(2002年にジュゴンについては破棄)、行政による具体的な保護施策の取り組みはまったく進んでいなかったため、これを機会に、種の保存法に基づく国内希少野生動植物の指定や保護区設定等を進めるべきである。
先月には、大浦湾湾口の埋め立て予定地付近で、地元テレビ局が、ジュゴンの交尾行動と推定される映像を撮影した。絶滅の危機に瀕したジュゴンの主要な生息地である辺野古海域に必要なのは、米軍の飛行場ではない。普天間飛行場代替施設建設事業の見直しを強く求める。
以上