自然を生かした地域づくりを! 泡瀬干潟自然環境調査から保全の提言 ―― 干潟のエコタウン泡瀬(イメージ図)
特異な自然環境と埋め立ての影響
泡瀬干潟は、中城湾を取り囲む大きなバリアリーフに囲まれ、さらに湾内のリーフなどにより幾重にも波が弱められて最後に到達して形成される、階層性の高い独自の干潟環境を持っています(図1)。
この多様な環境に対応し多様な生物が生息しています。国(内閣府沖縄総合事務局)と沖縄県による、泡瀬干潟の埋め立て事業が2002年から始まり、既に埋め立て地の外枠となる護岸が建設されてしまいました。
このまま事業を進めると、泡瀬干潟を特徴づける最も階層性が高い環境(区分5)をまるごと失い、埋め立て地周辺海域の生態系への影響は甚大です。
「工事ありき」の事後監視調査
環境アセスメント(以下アセス)では、埋め立てで失われる干潟と藻場の代償措置として、人工干潟の造成と海草移植を行うとしています。しかし、海草移植は失敗し、人工干潟でどのように干潟生態系を代償するのか、具体的な内容と科学的根拠はまったく示されていません。
また、事業着手後、研究者や市民団体などの調査によって、新種や日本では初めて発見された種を含む貝類、甲殻類、海草類、海藻類など希少種の生息・生育が確認されました。
その上、砂洲や海草藻場の変化などアセスでは予測していなかった事態が次々と確認されています。しかし、事業者は自ら設置した環境監視委員会などの委員の意見を聞かず、原因究明や保全策を行わないまま「工事ありき」の姿勢で工事を進めています。事業者はアセス後の調査結果を公開し、幅広く専門家や市民の意見を聞き、合意形成を図る場を設けるべきです。
沖縄市の市民参加の検討会議
一方、沖縄市は2006年12月「東部海浜開発事業検討会議」を設置しました。泡瀬干潟埋め立てを含む東部海浜開発事業について「客観的かつ多角的な視点から精査するとともに公平公正な観点から情報を公開する」ことが目的です。検討会議では、事業の必要性などに関する疑問点、市民意見の収集方法などについて検討し、6月には事業に関心の高いNACS-Jを含む50以上の団体に呼びかけ、意見を集めました。7月末には結果を取りまとめ、それを受けた東門美津子市長の事業に対する判断が下される予定です。
この間、NACS-Jは3月に調査報告書を沖縄市、国、県に提出し、「泡瀬干潟の自然をいかしたまちづくりプラン」を提案しました。今後も、干潟の自然環境保全と、埋め立て事業に頼らない地域づくりをいっそう働きかけていきます。
(開発法子/保護・研究部)
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