100年調査をし続ける「モニタリングサイト1000」 今年度から本調査を開始します!
2006年9/10月号より転載
モニタリングサイト1000では、主な生態系タイプごとの変化の動向を把握するため、森林、里地、湖沼、湿地、河川、海岸、浅海域など、生態系タイプに分けて調査の体制や手法などの枠組みがつくられます。今後モニタリングサイト1000で集められる調査データは、現在環境省が開発中の情報システムによって、ウェブサイト上で公開される予定です。
NACS-Jは里地タイプを担当
NACS-Jは前述の生態系タイプのうち、里地タイプについて、環境省からの請負事業として、調査に取り組むことになりました。
里地は、水路やため池、雑木林や田畑など、人間と自然とのかかわりがつくり出した、変化に富む自然です。その保全のためには、里地の自然環境の現状と、過去から今に至る変遷や、それを取り巻く社会状況の変化を把握することが不可欠です。
里地保全の主体であり、地域を一番よく知っている地元住民や市民がモニタリングに参加することで、自然の変化に気づき、具体的な管理方法や保全方策に生かすのが最もよい仕組みであるとNACS-Jは考えました。そして「モニタリングサイト1000里地調査」を市民参加の総合的な調査とするよう、環境省に提案してきました。そして、2003年から調査地や調査手法の検討を行い、06年度からは、まずいくつかの調査地で、地元の市民グループの皆さんとともに本調査を開始し、長い調査の第一歩を踏み出しました。
里地のような複雑な生態系をとらえるためには、さまざまな切り口で地域の自然を調べる必要があります。調査を実施する市民が、無理なくかつ効果的なモニタリング調査を実施していくために、「モニタリングサイト1000里地調査」では表のような調査項目を設定しました。
ただしこれらすべての項目を、一つの調査地で必ず実施しなければならないわけではありません。地元の体制や調査地の環境などを考慮して、地域にあった調査項目を選定し、実施していきます。
表:モニタリングサイト1000里地タイプにおける調査項目とその内容
調査地はどんな場所?
環境省は、「モニタリングサイト1000里地調査」で、全国に100~150カ所程度の調査地を設定することを予定しています。総合的な調査を実施する20カ所程度のコアサイト(重点調査地域)と、数項目の調査を実施する一般サイトに分けて、調査地や調査内容などの検討を進めています。
05年度から始まったコアサイトの検討では、日本を植生タイプ別に6つに区分し、まずはそれぞれの植生タイプに1カ所ずつコアサイトを設置することとしました。その結果、図に示したように3カ所のコアサイトが決定し、調査が始まっています。また3カ所の新たなコアサイト候補地では、調査実施に向けて地元市民グループと準備中です。
ボランティアの調査活動に 皆さんの協力が欠かせません
それぞれのコアサイトでは、地元の市民グループのメンバーとして、多くの会員や自然観察指導員の方にボランティアで調査にご協力いただいています。調査項目が多岐にわたるため、調査員が不足して、いくつかの項目の調査が実施できていない場所もあります。コアサイト周辺にお住まいの方で、この調査に参加をご希望の方は、ぜひNACS-J・モニ1000担当までお問い合わせください。
(廣瀬光子/保護・研究部)