南島モニタリング調査結果を生かす保全管理の仕組みづくり。
会報『自然保護』No.492(2006年7/8月号)より転載
小笠原諸島南島では、過剰な観光利用のため、自然の荒廃が進んでいます。保護と適正な利用を図る保全策を立てるため、NACS-Jは2001~05年度の5年間、自然環境モニタリング調査(東京都、林野庁委託)を実施しました。
それまで南島では、行政機関、現地NPO、市民が共に参加して保全策を検討する場はありませんでした。そこで、調査研究と並行して、NACS-Jがコーディネーターとなり、生態学や地理学などの専門家の客観的な意見と現場の意見を出す検討委員会を開きました。そして、そこで出た意見とモニタリング調査の結果を反映させて、観察路の整備や外来種の駆除などの対策を行う体制づくりも進めてきました。
また、調査期間終了後も現地の人たちで調査や保全管理を継続できるよう、調査には現地のNPOにできるだけ参加していただきました。自然観察路上に海鳥の巣ができてしまったなど緊急の措置が必要な場合も、現地の検討委員が対応できるようになりました。
南島での5年間の調査は終了しましたが、引き続き、行政、NPO、市民が協力して保全管理にあたり、今後は順序立てて保全管理計画を立てる部門も加えた体制をつくっていく必要があります。NACS-Jは今後も小笠原諸島の問題を解決する保全管理の仕組みづくりを提案し、実現していきたいと考えています。
(朱宮丈晴 保護・研究部)