綾の照葉樹林プロジェクト 自然林へ復元するための基礎調査を実施。
2006年5/6月号より転載
2005年5月、官民協働で照葉樹林の復元に取り組む「綾の照葉樹林プロジェクト」がスタートしました。人の手を加えず自然林を保護するエリア、人工林や二次林から自然林へ復元するエリアなどエリアごとに保全プログラムを計画実行していく予定です。
復元エリアには、スギ林、スギ混交林、自然林、ヒノキ混交林、ヒノキ林という5つの植生タイプが含まれています。人工林から自然林へ復元する方法を知るために、復元エリア内の30カ所(各20×20m範囲)で、植生の調査を行いました。自然林を100%として各植生タイプがどの程度自然林に似ているか(類似度)を、高さ1.3mより上層と下層に分けて比較しました。スギ林やヒノキ林などの単一の植生タイプでは、上層部は1%以下の低い類似度になりますが、下層部はスギ林で38.9%、ヒノキ林で40.8%と、比較的自然林に近い類似度になりました。
また、森林の地表面(林床)の植物の種類の数をみると各調査地点の平均で自然林48.3種に対してスギ林33.4種、ヒノキ林35.5種というように人工林についても意外に種数が多いことが分かりました。人工林からの復元をしていくため、これらの林床植生をうまく生かす間伐の方法を見つけ、具体的な保全策をつくっていきたいと思います。
(朱宮丈晴・保全研究部)
▲自然林を100%とした場合の各植生タイプの類似度
上層は高さ1.3m以上の個体の優占度、下層は草本層の存否データから計算。
(九州森林管理局「平成16年度 綾川流域照葉樹林帯植生基礎調査報告書」のデータより作成)