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埋め立てで豊かな自然が破壊される! 調査結果をもとに保全とまちづくりの議論を。

2005.11.01
活動報告

会報『自然保護』2005年11/12月号より転載


NACS-Jでは、2003年7月に「泡瀬干潟自然環境調査委員会」(委員長・目崎茂和)を設け、2年間にわたり沖縄島の泡瀬干潟の自然環境について、総合的な調査を実施してきました。

これは現在埋め立て事業を進める国(沖縄総合事務局)と沖縄県が実施した環境アセスメントが不十分で、泡瀬干潟の自然の実態を正しく把握していないことに対し、泡瀬干潟の自然を科学的に評価するために実施したものです。この調査結果をもとに、事業者に対し、適切な環境保全措置の実施と事業の見直しを求めていきます。

調査から、泡瀬干潟は

1)複雑な地形と、ジャーガルと呼ばれる泥土からなる「黒い干潟」という地質の特異性を持ち、その面積の広大さから日本の代表的なサンゴ礁干潟であること、

2)複雑な地形がつくり出す固有な波浪、流れ、底質などによって、多様で希少な生物種を生育・生息させる干潟環境を形成し、日本有数の生物多様性のホットスポットであること

が明らかとなりました。

 

生物多様性ホットスポット!

海草は13種が生育し、その多様性は日本一といえ、新種、新産の海草藻類が次々と確認されました。貝類については、05年7月の調査で、日本で初めてカニに擬態した貝、アワセカニダマシマメアゲマキ(仮称)を発見しました。これまでにもカニや貝と共生する新種と考えられる貝類がいくつも見つかっており、今回の調査で約500種の貝類を確認しました。

鳥類は165種を確認し、うちシギ・チドリ類が最も多く、県内最大の渡来地であることが明らかになりました。ムナグロの越冬地としては日本最大です。さらに、干潟域に隣接した海岸にすぐ近い、浅い海域にサンゴ群集が数カ所で発達しています。

また、人々の利用面からみても、貝採りの場として親しまれており、採取対象となる貝は21種を数えました。これほど多様な採貝メニューを持っているのは県内でも泡瀬干潟が唯一と考えられます。

しかし、このまま埋め立てが進めば、これら多くの生き物の、かけがえのない生育・生息場所が消失してしまいます。

051101干潟鳥瞰図▲干潮時のシギ・チドリ類の分布(2004.4.19)赤枠は埋め立て予定地、青が採餌・休息場所。黄線は干潮時干潟となる範囲。

 

泡瀬干潟の自然を活かしたまちづくり

この調査結果を多くの沖縄の人たちに知ってもらい、埋め立てではない泡瀬干潟の自然を生かしたまちづくりの方法をともに考え提案するため、9月17日、うるま市民芸術劇場で「アワセてみよう 干潟の自然とまちづくり」と題したシンポジウムを開催しました。

調査で明らかとなった泡瀬の自然のデータを基礎資料とし、さまざまな主体と粘り強く干潟保全とまちづくりの議論を続けていくことの重要性を参加者で共有しました。

 

ガイドブックできました!

051101泡瀬干潟の自然ガイドブック表紙

このたび調査結果を『うまんちゅぬ宝・泡瀬干潟の自然ガイドブック』(泡瀬干潟自然環境調査報告書【普及版】)にとりまとめました。関心をお持ちの方はぜひご覧ください。

『うまんちゅぬ宝・泡瀬干潟の自然ガイドブック』(PDF形式/3000KB)

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