「沖縄・ジャンのすむ海のかんさつ会」開催
会報『自然保護』No.482(2004年11/12月号)より転載
NACS-Jは、2002年7月から名護市東海岸において、市民参加による海草藻場調査「沖縄ジャングサウォッチ」を実施し、その結果をジュゴンや海草藻場の保護活動に役立てています。
2004年1月の調査では、普天間飛行場代替施設建設予定地である辺野古のボーリング予定地でジュゴンの食み跡が発見され、この海が良好な海草藻場であることがわかっています(詳しくは https://www.nacsj.or.jp/katsudo/henoko/2004/01/post-38.html ) 。
ジュゴンやウミガメなどが食事をする場、エビや魚類などが育つ場、としての海草藻場の重要性は、地元の人たちにもあまり知られていません。それに加えて、最近の地元の子どもたちでも、野球やサッカーをやることが多く、海で遊ぶことが少なくなったとのこと。昔はすぐ身近にあった海が、だんだん遠い存在になっている、こんな声も聞かれます。
このため、海の楽しさ・豊かさを知ることが、海を大切に思う気持ちにつながっていくよう、この海のかんさつ会を実施しました。参加者は総勢約50名。子どもたちは3班に分かれ、海草や生きものの観察や、海水を使った塩づくりを体験しました。
■海草の観察では、海草と海藻の違いやはたらきなどを学習。ぱっと見ただけでは同じように見えてしまう海草にもいろいろな種類があることを知り、足元の海に広がる海草を虫めがねで食い入るように見たり、ジュゴンの気持ちになって、少しかじってみたりもしました。
■生きものの観察では、ナマコを手にのせてみたり、はさみに手を挟まれないように恐る恐るカニを捕まえたりと、普段はあまり遊ぶことのない生きものたちにも触れて楽しんでいました。
■浜では、昔、近くの地域でも行われていた、塩づくりを体験しました。「海水はしょっぱい」ということはわかっていても、実際に海水が塩の結晶になっていく様子にみんな興味津々。恐る恐る味見をしていました。
■最後に、今日1日で観察できたものを子どもたちがスケッチにして、それを共有しながら張り合わせた「ジャンのすむ海マップ」を完成させました。子どもたちは、楽しみながらも、それぞれ印象に残ったものの特徴をよく観察しています。
服がぬれることも気にせず、海の中を駆け回る子どもたちの無邪気な表情を見ていて、かんさつ会を開催してよかったと、心から思った1日でした。
今回のかんさつ会を地元の小学校や教育委員会のご協力・ご理解をいただきながら開催できたことの意味は大きく、参加してくれた子どもたち中に、海を大切に思う気持ちが芽生えていくことを願うばかりです。
(小林 愛・NACS-J保護研究部)