尾瀬・至仏山登山道の健康診断を進めています
会報『自然保護』No.481(2004年9/10月号)より転載
生物多様性を守れる利用方法への転換のために
今年は、雪解けが例年より 2週間以上早かったため、6月中旬から調査研究を始めることができました。
蛇紋岩という特殊な岩石の上にできたオゼソウなど高山性の植生、夏まで雪渓が残ることからできたお花畑となる雪田群落、それらに対して長年の集団登山などで踏まれて裸地化させたり、土壌を流れ去らせてしまった個所が登山道上に次々と出てきます。この約4kmのコースの生態学的健康診断が、本調査の目的です。
至仏山は雪解け時に登山道がわかりにくくなること、そのために植生の上を歩きやすくなってしまうなどの問題があるため7月1日まで入山自粛期間となっています。人がいないこの6月末には、危険も予想され、一般の登山者が入山していてはやりにくい調査活動を集中的に行ないました。
通常、調査員は木道から見渡せる範囲の事物を観察し記録しますが、周囲の自然が全体としてどのようになっているかはよくわかりません。そこで木道を中心とした幅約80mの範囲を写していくわけです。風の強い2000mの山に登山しながらの撮影は、体力と根気のいるものでした。
解像度は高く、約10cmのものが識別できるほど。携帯用のパーソナルコンピュータで、上から見たその場所の全体像をつかみながら現地調査ができるよう、現在加工をしています。
この活動を通して、このような場所の調査方法のモデルもつくれたら……、とも考えています。尾瀬でNACS-Jの腕章をつけた調査員に出会われた際は、ぜひ声をおかけください。
横山隆一、金子良知夫(総合プロジェクト・尾瀬担当)