小笠原・南島の帰化植物、クマネズミなどの外来種の侵入状況がわかりました。
会報『自然保護』No.480(2004年7/8月号)より転載
小笠原南島の保護と適正利用のため、「小笠原南島自然環境モニタリング調査」(東京都委託)を継続しています。これまでに海鳥(オナガミズナギドリ)の生態や、人の利用に伴う植生の変化、微小な地形の変化、人の利用状況などが明らかになっており、2003年度の調査では、さらに帰化植物(小笠原に持ち込まれ野生化した種)の分布、クマネズミなど国内外来種の生息分布状況を明らかにしました。
植物の種類や構造を比較するため、最も人の利用が盛んな鮫池から扇池への自然観察路と、過去に利用ルートがあった陰陽池北側、現在利用が行なわれておらず固有種や希少種が多い北部半島部の3カ所で調査したところ、ムラサキヒゲシバ、タバコなどの帰化植物は南島に広く分布していること(図)、自然観察路周辺ではクリノイガなどの人為散布種の優占度が高く、観光客の入島に伴って散布されたと考えられることが明らかになりました。
また、クマネズミについては、自動カメラによる撮影でその生息が確認されました。クマネズミの島内の植物への影響を明らかにするため、夏に食痕調査、冬に糞の内容物の予備的調査を行なった結果、夏はタコノキ、モンパノキなどの果実に食痕が見られなかったこと、冬は主にコウライシバの穎果を食べていることなどがわかってきました。今後も、各季節ごとに詳細な調査を行ない、その影響を明らかにする予定です。2004年度の調査では、新たに昆虫相の調査を予定しており、南島の国内外来種の分布や利用との関係などを明らかにし、保全策づくりを進める予定です。
(朱宮丈晴・保護研究部)