綾の森で強行された巨大な鉄塔建設、無用の電力事業は再考すべき
会報『自然保護』No.478(2004年3・4月号)より転載
綾の森に巨大鉄塔がついに出現しました。昨年12月のことです。NACS-Jは九州電力が昨年8月に強行着工したことに対し、強く中断・再考を求めてきましたが、九州電力はこれを無視し続け、住民・市民団体の反対の声を封じるように既成事実をつくりました。年が明けても工事は進んでいます。
世界自然遺産候補地選考委員の大澤雅彦NACS-J専務理事は、「優れた自然の風景という条件に直接抵触する」と鉄塔建設が将来の世界遺産への道を閉ざすことを危惧しています。それでも地元行政や議会は容認の姿勢を崩さず、宮崎県も動こうとしません。
困難な状況の中、1月31日に九州電力が宮崎市で初の公開説明会を開き、「綾の森を世界遺産にする会」が問題点を追及しました。九州電力が「オーストラリアの世界遺産にも送電線がある」と主張したのに対し、大澤専務理事は「綾に比べ広大な面積があり、同一視できない。原生的な森に脅威を与えながら植林するのは本末転倒」と批判しました。
国の総合資源エネルギー調査委員でもある九州大学の吉岡斉教授の「提言」も紹介されました。電力の現状・将来を見通し、無用の事業をこれ以上進めないため、すでに建設された鉄塔の撤去への道筋を論理的に示しました。このような発表を通じ、世論を高めることが再考への道を開くものと考えています。同時に、綾の森の価値を広く知ってもらう活動も重要な課題です。
(小川 渉/綾の森を世界遺産にする会)