「至仏山環境共生推進調査」 尾瀬の環境を保全するための課題
会報『自然保護』No.477(2004年1/2月号)より転載
群馬県からの委託事業として2003年6月の雪解けとともに始めたこの調査は、植生破壊がすすむ尾瀬・至仏山の根本的な保全と、そのために必要な対策と利用のしくみを提案しようとしています。
調査チームは、植生回復対策の評価(植生チーム)、環境の分類と測定(地生態チーム)、入山者の動きや意識の調査(利用動態チーム)、生物多様性の現況評価(成果統合チーム)の四つに分かれ、雪に閉ざされる11月まで調査を行ないました。
調査の2003年度の目標は「生態学的な健康診断」で、データを総合的に分析するためGISを使った「調査基盤システム」も制作しました。
この調査を通して見えてきた問題は、今の登山道が粘土化しやすい場所につくられていること、木道に近いほど植生の多様性が低くなってしまっていること、安全のための重要な情報(事故が多い東面道下りルートに関してなど)が利用者に事前に伝わっていないことなどです。
▲至仏山東面道の裸地化のようす。(1998年10月©群馬県)
▲至仏山東面の木道
11月に開催された「至仏山保全緊急対策会議」ではこれらの中間報告を行ない、緊急な安全対策に関しては今年度中に検討し、保全対策は2005年度に行なうことを決めました。
さらに、現状の施設等に手を加えることや、これまで行なわれてきている植生回復事業などは調査の結論が出るまでいったん停止することになりました。
今後、至仏山の植生劣化のメカニズムを総合的に評価し、至仏山保全のためにあるべき「処方箋」を見つけたいと思います。
日和﨑りさ(総合プロジェクト・尾瀬担当)