新種が続々発見される泡瀬干潟 工事は生物の多様性を損ないます
会報『自然保護』No.477(2004年1/2月号)より転載
沖縄本島の中央部東海岸にある泡瀬干潟では、近接する航路の浚渫土砂処分のためにおよそ一八六ヘクタールを埋め立て、マリーナや人工ビーチ、ホテルなどを建設する計画があります。
しかし、この干潟をよく調べてみると、今まで知られていない海草や貝、カニなどさまざまな生物の新種が発見されています。NACS-Jではこの干潟の生物多様性の高さを示すため、本格的な調査活動を始めています。
しかし、市民団体や研究者の調査で、これまで知られてきたクビレミドロ(藻類)やトカゲハゼ、ヒメウミヒルモ(海草類)などに加え、新種や日本新産種を含む、海草類(ホソウミヒルモ、ウミヒルモの一種)、貝類(ニライカナイゴウナ、オボロヅキ、スイショウガイ)、甲殻類(オキナワヤワラガニ)、海藻類(リュウキュウヅタ)など希少種の生息・生育が次々と確認され、その保全措置を検討するため、現在工事は中断されています。
泡瀬干潟は、日本の中でも特筆すべき保護上重要な生物多様性が高い場所となっていることが明らかになりつつあるのです。
NACS-Jは2003年7月に泡瀬干潟自然環境調査委員会をつくり、地元市民団体や研究グループと協力して泡瀬干潟の総合的な調査を行なっています。泡瀬干潟の自然環境の現況を明らかにし、科学的な評価を行なうことが調査の目的です。
泡瀬干潟のどこにどのような環境があり、どんな生物が生息しているのか、水質や海水の流れはどのようになっているのかを明らかにし、保全策を提言していこうと考えています。
事業者は、泡瀬の自然環境の実態を十分に把握することなく、海草の移植や人工干潟で保全するとしていますが、これではアセス書に明記されている保全目標の干潟・藻場生態系の保全は図れません。
NACS-Jの調査では、ジュゴンの生息地として重要な海草藻場、シギ・チドリなど渡り鳥の中継地として、国際的視野の中でも泡瀬の自然環境を評価する必要があると考えています。
▲海草の海底にすむナマコとトラギスの仲間(撮影:小橋川共男)
▲新種の海草・ホソウミヒルモ(仮称)(写真提供:泡瀬干潟を守る連絡会)
▲新種の貝・ニライカナイゴウナ(新称)(撮影:山下博由)
また、私たちの粘り強い働きかけで、事業者が設置した環境監視と保全策を検討する委員会に、NACS-Jや地元市民団体等から委員として参加できるようになりました。
これまで事業者の意向に強く左右される運営が行なわれてきましたが、公共事業における委員会として、科学的なデータに基づく環境保全策の議論と合意形成を図る場となるよう、委員会の中と外から意見を出していきます。
泡瀬干潟の自然とこの問題を全国の人たちに知っていただき、保全を考える場となるよう、引き続き皆さんのご支援をお願いします。
保護研究部:開発法子