「AKAYAプロジェクト」正式名称決定! 地域の自然を調べるプログラムをスタートさせます。
会報『自然保護』No.475(2003年9/10月号)より転載
群馬県三国山地、緑の回廊を含む約1万haの国有林をフィールドに、地域社会・行政・NGOのパートナーシップによって、環境管理と持続的な社会づくりをすすめる「(仮)MIKUNIプロジェクト」。7月24日に第3回準備会議を開き、正式名称を「三国山地/赤谷川・生物多様性復元計画(通称『AKAYA(赤谷)プロジェクト』)」と決定しました。
今号から「AKAYAプロジェクト」でNACS-Jがすすめる4つのプログラムを順次紹介していきます。研究者と市民・住民が力を合わせて調査研究することで、地域の自然を詳しく知り、保全と利用の新たな計画づくりに生かしていく・それが、自然研究系プログラムです。NACS-Jが行なう自然研究系プログラムは、2種類の研究事業としてすすめます。
1つは、地域に関する地理情報を収集し、コンピュータ上でデータベース化する「地理情報システム(GIS)」の構築。これは、植生と地学的な情報をも含む、プログラムをすすめる上での基盤的な資料となります。もう1つは、動物の調査を通じて、現在の環境の状態を診断し、変化を追跡する「モニタリング」です。この調査はまず、3つのタイプの生物を対象として行なう予定です。
(1)森を支える生物
林床に生息する土壌動物を植生ごとに調べ、この地域の土壌動物の構成から、現在の森林の評価を行ないます。
(2)森に支えられる生物
ホンドテンの生息実態を調査し、小・中型の哺乳動物がくらしていける自然が、この地域にどのように分布しているかを、明らかにします。
(3)環境全体に支えられる生物
この地にすむイヌワシ・クマタカの生態は、地域の会員・NACS-Jが中心となって10年間にわたり調査しています。これをモニタリング調査にステップアップさせ、山地性大型猛禽類のくらしをモニターし、環境との関係を研究します。
これらの動物は、それぞれ生活スタイルや生活に必要な範囲が大きく異なる生物です。これらの調査結果を重ね合わせ、現在の森林や渓流環境の質を把握し、「生物多様性の復元」という今後の計画に役立てます。また、モニタリング調査は、研究者と会員・指導員の皆さんがパートナーになってすすめていきます。会員・指導員の皆さんのご参加をお待ちしています。