「検討結果を無視する事業者に強く抗議する」
沖縄島・泡瀬干潟、委員会有志が意見書を提出しました。
2003年8月4日
内閣府沖縄総合事務局開発建設部長 溝内俊一 様
沖縄県土木建築部長 安慶名正行 様
(財)港湾空間高度化環境研究センター理事長 前田正孝 様
環境監視委員会委員 香村眞徳
同 吉野哲夫
同 山城正邦
同 開発法子
環境保全・創造検討委員会委員 仲座栄三
同 清野聡子
海藻草類専門部会委員 前川盛治
中城湾港泡瀬地区環境監視委員会及び環境保全・創造検討委員会委員有志による事業者への意見
1.委員会の検討結果を無視する事業者の態度に強く抗議する
私たちは、環境に関する各分野の専門の立場から、本事業における環境影響の監視及び評価を行い、適切な環境保全措置が実施されるよう、事業者に対し科学的根拠に基づき指導・助言を行って参りました。
7月29日に開催された第2回環境監視委員会においては、H14年度の環境監視結果、H15年度の環境監視計画、新たに発見された希少種の保全措置等について検討しました。
その結果は以下のように集約できます。
- 環境監視にあたり、環境アセスメント時の調査データでは不十分な調査項目がある。鳥類・海藻草類・底生生物などについては工事初期の現段階で、工事が進まないうちに補足調査を行う必要がある。
- 泡瀬干潟の自然環境の特徴と重要性に鑑み、干潟・藻場・サンゴ礁生態系の維持・保全を監視できる調査内容を再検討する必要がある。
- ウミヒルモ類、貝類、海藻類など新たに発見された希少種については、調査データに不備が見られるので、再調査の上、再度委員会に報告し、委員会で保全策を検討すること。
しかし、委員会終了直後に行われた事業者の記者会見では、委員会の検討結果を一切踏まえることなく、「当初の予定通り8月から工事を着工する。希少種には影響はないと事務局は考えている」と発表しました。
このような、委員会を無視し、委員会の設置意義をも踏みにじる、工事ありきの事業者の態度は許し難く、厳重に抗議するものです。事務局は、このような発表内容を撤回してください。
2.希少種の保全措置は、両委員会を合同で開催し検討すべきである
新たに発見された新種、日本新産種を含む、海草類(ホソウミヒルモ、ヒメウミヒルモ、ウミヒルモsp.)、貝類(ニライカナイゴウナ、オボロヅキ、スイショウガイ)、甲殻類(リュウキュウヤワラガ二)、海藻(リュウキュウヅタ)等の希少種については、詳細な調査を実施し学術的な評価を行う必要があります。
また、環境監視委員会と環境保全・創造検討委員会(専門部会を含む)を合同で開催し、これら希少種を含む泡瀬海域の生物及び自然環境について、総合的な評価を行い、その環境保全措置を検討すべきです。
3.委員会の科学的な検討結果は事業に反映させるべきである
本委員会は、公共事業を環境保全面からチェックする委員会であり、その立場は、国民から付託された第三者委員会の性格を有しているといえます。
そこでの審議過程、検討結果は国民に公開されるべきもので、また事業者の意向に左右されるものであってはなりません。事業者は、委員会での専門的見地からの科学的な検討結果を最大限尊重し、事業に反映させる必要があります。
以上
この件に関する問合せ先:開発法子(日本自然保護協会研究担当専門部長)
▲海草とサンゴが入り交じる泡瀬干潟の海