小笠原・南島 —その特異な自然と利用・保全への取り組み
会報『自然保護』No.474(2003年7/8月号)より転載
小笠原諸島南島は過去のヤギの放牧や観光客の入り込みにより植被の裸地化、土壌侵食など自然環境への影響が懸念されてきました。NACS-Jは2001年度から都の委託で自然環境に関して生態学的な基礎にたった科学的なデータを取り、保全策に生かすことを目的として調査を実施しました。2002年度は4月、9月、2月と3回にわたって南島に渡り、自然環境の変化と人為的な影響を把握する調査を行ないました。
調査では気象観測データの収集解析、植物相と植生、オナガミズナギドリの分布と繁殖生態を観察し、台風などの影響で強風・波浪・高潮を受けること、植物の立地ごとのすみ分け、オナガミズナギドリの生態の一部が初めて明らかになりました。また人為的な影響に関しては利用者数のカウント、土壌侵食部の測量、自然観察路上の植生変化と土壌侵食状況のモニタリングを行ない、連休、お盆、年末年始に利用が集中すること、傾斜の急なルート上で裸地化や土壌侵食が起こっていることが観察されました。お盆のころは気象環境が厳しく、利用が集中することから自然観察路へのインパクトが大きいというように相互関連性が認められました。
これらの結果を報告書にまとめました。こうしたデータをもとにした利用のあり方など保全策の検討を働きかけていきたいと考えています。
(朱宮丈晴・保護研究部)