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沖縄・泡瀬干潟 海草の移植実験は失敗です

2003.01.01
活動報告

 
会報『自然保護』No.471(2003年1/2月号)より転載


2002年10月8日、沖縄島東海岸にある豊かな海草藻場が広がる泡瀬干潟で、埋め立てのための海上工事が着工されました。

内閣府沖縄総合事務局と沖縄県に義務付けられた環境保全措置の見通しが立たないままの着工であったため、NACS-Jは11月13日、沖縄担当大臣・沖縄県知事に、強行着工への抗議と、埋め立て事業を中止し、海草移植地の復元を求める意見書を提出しました。

 

海草は移植できるのか?

泡瀬干潟の埋め立て事業は、すでに環境アセスメントや埋め立てに必要な法的の手続きは終えています。

しかし、泡瀬干潟は生物多様性・自然環境の重要度が非常に高いことから、埋め立て承認の条件として、専門家や地元市民などからなる「環境監視・検討委員会」を設けて、環境保全措置をとることになっていました。

2001年2月に始まった委員会では、希少種クビレミドロという藻類の保護や、バックホウという重機による海草の移植等について検討されてきました。海草が移植できるかどうかは、事業をすすめるかどうかの大きな焦点でした。

9月30日の委員会では、移植実験の結果について、委員から疑問や問題点、さらなるモニタリングの必要性が指摘され、審議は継続することになりました。しかし、沖縄総合事務局と沖縄県は、それにもかかわらず着工したのです。

 

移植した海草はほとんど消失

 
NACS-Jは、この移植実験は、計画がずさんで結果の評価方法も科学性を欠いていることから中止を求めていました。

また10月6~7日に、海草の専門家・相生啓子さんや地元市民グループの参加と協力を得て現地を調査したところ、移植は失敗というだけでなく、実験の名の下にもともとあった海草藻場が破壊されていたことがわかったのです。

自然藻場では貝類・ヒトデなど41種の生物と良好に生育する海草が見られましたが、移植地では海草は潮流や台風等でほとんどが消失し、4種の生物しか確認できませんでした。バックホウによる機械化移植は環境保全策として適切でないうえに、周辺の海草藻場や底生生物、サンゴ等にも悪影響を広げることが懸念されます。

今後も事業者に対し、工事の中止、科学的な根拠と開かれた議論に基づく環境保全措置の実施、移植地の海草藻場の復元と埋め立て事業の中止を求めていきます。

保護研究部・開発法子


▲海草調査。本来の泡瀬干潟では、緑あざやかな海草、たくさんの貝・ヒトデの姿を見つけることができる。

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