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「海岸の群落–約半数は保護が必要」

2002.08.06
活動報告
会報『自然保護』No.458(2002年7/8月号)より転載


植物群落レッドデータ・ブック(群落RDB)の活用事業の一環として実施してきた海岸植物群落調査結果の一部がまとまった。

 

海岸の群落–約半数は保護が必要

 

1996年に発行した群落RDBに記載されている7492件の植物群落のうち、海岸を立地とする植物群落は537件であった。海岸を立地とするものには、海岸低木林や海浜草本群落、塩生湿地植物群落、海岸崖地草本群落、マングローブ林などが含まれる。
 

これらを対象にデータ解析を行った結果、群落RDBの記載された海岸植物群落のうち、保護管理状態の悪いものが42パーセント、保護対策が必要なものは48パーセントであった(図1,2)。これら群落へ負荷を与えている原因としては、踏みつけや盗掘など人の立ち入り、ゴミ・廃棄物の投棄、護岸工事や埋め立てなどの水際開発が大きかった(図3)

020701植物群落の保護管理状態.jpg

(図3)

020701植物群落へのインパクト.jpg

 

追跡調査の実施–千葉県の群落

 

一方、群落RDB作成時からすでに10年近くが経過していることから、海岸植物群落が置かれている状況をより明らかにするするため、地域を限って追跡調査を実施した。
 

今回は、千葉県をモデル調査地とし、群落RDBに記載された県内の海岸植物群落10ヶ所の現地調査を行った。
 

その結果、10ヶ所の群落地で10年前よりも保護・管理状態が悪化しているところが2ヶ所あった。そのうちの1つはマンション建設により群落地の4分の3以上が失われ壊滅状況であった。
 

また保護・管理状態が10年前と同様に悪い状況のまま改善されていないところは2ヶ所であった。ほかの群落については保護区に指定されて保護・管理がなされていても、海岸と群落地の間に建設された道路やクロマツ植林によって海岸と隔離されていたり、海岸侵食がすすむなど、海岸という本来の生育環境が失われつつあり、群落をとりまく状況は危機的であることが分かった。

 

全国の海岸群落で管理の見直しを

 

今回の調査を通して、全国的な海岸植物群落のモニタリングや、海岸植物群落保護の視点から海岸管理のあり方を見直すことの必要性が明らかになった。今後、市民参加でできる全国的な海岸植物群落の追跡調査の実施、海岸植物群落の保護に向けて取り組んでいきたいと考えている。

 

(開発法子・保護研究部研究担当専門部長)

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